アクティビストのオアシスは24年もドラックストア&調剤業界で大暴れ 宮本亜美
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物言う株主「オアシス・マネジメント」の乱で、ドラッグストアや調剤薬局業界は2024年も目が離せない。
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いま、ドラッグストアや調剤薬局業界にとって最も目が離せない人物といえば、香港を拠点とする投資ファンドであるオアシス・マネジメントのセス・フィッシャー最高投資責任者だろう。
2023年は、ドラッグストア業界がとにかくオアシス、そしてフィッシャー氏に振り回された1年だった。だが、同氏は調剤薬局も巻き込んでの「再編が必要だ」と訴える。直近も、今夏に株主総会を控える調剤チェーンなどの株を買い増し、株主提案の準備を進めているとみられ、業界が右往左往する状況は24年も続きそうだ。
そんなフィッシャー氏が02年に創業したオアシスは、いわゆる“アクティビスト(物言う株主)”だ。
14年、当時まだ自社開発のゲーム機にこだわっていた任天堂へ「スマホゲームを開発すべき」と求め、注目を集めた。20年には東京事務所を構えて日本での投資活動を本格化させており、直近では、大正製薬や花王、熊谷組にも「対話(エンゲージメント)」と称した声明や、株主提案を仕掛けている。
創業家支配を問題視
ヘルスケアからゼネコンまで、オアシスが仕掛ける相手の業界は多岐にわたるが、とりわけ“ロックオン”している領域がドラッグストア業界だ。23年6月、まず業界2位のツルハホールディングス(HD)に株主提案を実施。「創業家による企業支配」を問題視し、鶴羽順社長の父・鶴羽樹氏が就く取締役会長職の廃止や、社外取締役候補5人の選任などを要求した。7月には、業界8位のクスリのアオキHDにも株主提案の「キャンペーン」を展開。青木宏憲社長と、弟で副社長の孝憲氏の退任を求めた。
なぜ、オアシスはドラッグストア業界にこだわるのか。その一つが、「日本の縁故主義」の問題だ。ツルハもアオキも、創業家が経営を担う「同族会社」。フィッシャー氏は、ドラッグストア企業が同族経営をやめれば、業界はもっと統合再編が進み、最終的には3〜4社程度に収束するとの見方を示している。
もっとも株主総会では、両社ともにオアシス側の提案は退けられた。だが、結果的にオアシスが掲げた「統合再編」が大きく進む格好となった。というのも、業務提携関係にあったイオンが、株主総会でツルハの窮地を救い、イオン傘下のウエルシアHDとツルハとの経営統合が実現したからだ。
ツルハは当初、オアシス側の株主提案を否決するため、オアシスと一般株主の委任状を奪い合う「プロキシファイト(委任状争奪戦)」を繰り広げていた。そこに、ツルハの大株主であるイオンが登場。ツルハ側を支持する声明を発表し、8月の株主総会でオアシス提案の否決に結びつけた。
その後、一時はツルハがMBO(経営陣による買収)を模索しているとのうわさも流れたが、24年2月、イオンがウエルシアとツル…
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週刊エコノミスト
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