投資・運用 個人株主新時代

バフェット流“消費先送り力”を新NISAで生かせ 尾藤峰男

バークシャー・ハサウェイの株主総会では、長期投資を巡るエピソードが紹介された(2024年5月4日、米ネブラスカ州オマハ) Bloomberg
バークシャー・ハサウェイの株主総会では、長期投資を巡るエピソードが紹介された(2024年5月4日、米ネブラスカ州オマハ) Bloomberg

 無駄な出費をやめ、長期間、複利の投資に回すことで、お金も人生も信じられないほど豊かになる。バフェット氏の総会でのエピソードを披露しよう。

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 筆者は今年もウォーレン・バフェット氏が率いる米バークシャー・ハサウェイの株主総会に行ってきた。2014年来、連続11回目(うち2回はコロナ禍のためオンライン総会)の参加だった。まずは、今年5月4日に開催された株主総会の様子を紹介しよう。

 バフェット氏によれば、バークシャーの株主は、全米に広がるが、さまざまな形で寄付する人が大変多いとのこと。そういう人たちは、バークシャーの株価の上昇で、大きな資産を築くのだが、もう一つ、「ディファード・コンサンプション」(お金を使うことを遅らせること)に特徴があるという。

株式の運用益で学費無料

 ここでバフェット氏は一つのエピソードを紹介した。ニューヨーク・ブロンクス(収入がニューヨークで最も少ない地域)にある医学大学のほぼ半分の学生は、卒業時に20万ドルの借金を抱えるとのこと。この大学の学費が、今年の夏から完全にフリー(無料)になった。その資金の出どころは、長くバークシャー株を保有していたある男性の遺産10億ドル(約1550億円)。この額だと、永久に学費はフリーにできるとのことだ。ホールに集まった学生の前で、このことが遺族である男性の妻によって発表されると、一斉に歓声が上がり、涙ぐむ学生もいたという。バフェット氏は、寄付したこの婦人を今年の株主総会に招き、会場で紹介した。

 婦人の夫は、バフェット氏と1960年代に知り合い、バークシャー・ハサウェイに早い時期に投資していたとのことだが、おそらく60年代からバークシャー株を保有していたのだろう。バークシャーの株価は、65年から2023年までの59年間、年率19.8%の利回りを上げ、約4万4000倍になっている。この人物は、数十年にわたりバークシャー株を持ち続け、複利効果がフルに発揮されて、10億ドルもの寄付につながったことになる。ちなみに、もしこの人物が65年にバークシャー株に投資して23年に10億ドルになっているとすると、初期の投資額は2万3500ドル程度だ。

 そして、もう一つ。バフェット氏が言う「ディファード・コンサンプション」、お金を使うことを遅らせるということだ。この人物は、バークシャー株を売らずに、ずっと持ち続けていたから、このような財産を築けた。バフェット氏によれば、長年バークシャー株を持っている人は、そのお金を使わずに、寄付する人が非常に多く、一方で大変幸せな人生を送っているという。

 このようなバフェット氏の話は、今年1月から始まった新NISA(少額投資非課税制度)の活用にあたって、大変教訓になる。新NISAは18歳から始められ、無期限で非課税だ。若い人にとっての時間軸は、このバークシャー株主の59年間に相当するか、あるいは、さらに長くなる。お金を使わないで、こつこつとためて、新NISA枠(つみたて投資枠、成長投資枠合計で1800万円)いっぱいに積み上げていったら、その効果は絶大なものになる。

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週刊エコノミスト

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