経済・企業 エネルギー基本計画
人口減だがDXで電力需要は急増 原発「新増設」方針を明記へ 本橋恵一
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経済産業省がエネルギー基本計画の見直しに着手した。来年3月までに閣議決定する。
温室効果ガスの削減目標は66%か
政府のエネルギー基本計画は、国のエネルギー政策の方針を定めるもので、おおむね3年ごとに改定される。まとめるのは経済産業省だ。現行のエネルギー基本計画(第6次エネルギー基本計画)は、2021年に閣議決定されている。
今回の計画の見直しで注目される点は、第一に、二酸化炭素(CO₂)などの温室効果ガスの排出削減をどう想定するか。第二は、温室効果ガス排出削減の目標年度をいつに定めるか。第三は、電源構成と電力需要の目標だ。
削減目標はエネルギー基本計画ではなく、並行して環境省と共にまとめる「地球温暖化対策計画」に盛り込まれるものだが、CO₂排出はエネルギー生産・消費などと密接に関係しているので、エネルギー基本計画を見直す際の重要な根拠となる。現状では、削減目標は35年度時点で13年度比66%削減が有力だ。これは昨年の主要7カ国(G7)環境相会合で、35年の削減目標として19年比60%削減が合意されたためだ。
日本の30年度の削減目標は、13年度を基準としているので、これに合意内容を合わせると66%削減となる。つまり、日本は今後5年間でさらに20%も削減する必要があるのだが、「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の報告書によれば、先進国は35年までに80%削減が求められている。そのため、66%削減でも足りない。
削減目標年度は、40年度という案が出ている一方で、4月に経済団体連合会は、50年度の電源構成の明示を求めるとの提言を発表している。じつは、10年に策定された第3次エネルギー基本計画以降、目標年度を30年度としており、これは変わっていない。背景には、11年の東日本大震災以降、原発の再稼働が進んでいないことや、日本の削減目標が30年度までしか決まっていなかったことなどがあると考えられる。
しかし、エネルギーインフラの建設には、長期の時間がかかるため、長期計画は必須であり、特に建設のリードタイム(場合によっては20年以上)が長い原発の新設を考えると、経団連が50年度の電源構成の明示を求めたことも理解できる。また、「2050年にカーボンニュートラル(実質排出ゼロ)」は世界的な目標とされている。削減目標が35年度、エネルギー供給や電源構成の目標年度は40年度とずれているが、インフラ整備が必要な目標が35年度では、目標として近すぎ、経産省としては、削減目標にあまりとらわれない計画にしたいとの思惑もあるだろう。
石炭火力と原子力の扱い
今回の見直しで、原発はどうなるのか。現状では、主に東日本地域の原発再稼働が進まない一方で、中国電力の島根原発3号機以外の原発新設は、短期的には困難だ。40年度には、運転開始から60年以上の原子炉も出てくるので、運転許可の再延長を…
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週刊エコノミスト
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