国際・政治 イスラエル・イラン問題
中東3火種に出口なし 不可避の混乱劇シーズン2 斉藤貢
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小康状態にも見える中東情勢だが、ガザの衝突は終わりが見えず、核開発問題もなんら進展はない。現状は「混乱劇」の幕あいに過ぎない。
イスラエルのラファ侵攻方針もイラン大使館空爆もネタニヤフ首相の政権延命策か
昨年10月以来続く中東の混乱はやや小康状態のようにも見え、一時高騰した原油価格や金価格も下がっている。しかし、中東が直面している①ガザの衝突、②イスラエルとヒズボラ(レバノンのイスラム教シーア派組織)の対立、③イランの核開発問題──という三つの大きな問題は何ら解決の糸口が見えない。中東情勢が再び緊迫化するのは時間の問題に過ぎないように思える。つまり現在は、「中東の混乱劇」の第2幕が始まる前の幕あいという、つかの間の休憩に過ぎないのではないだろうか。
まず昨年10月から続くイスラエルとハマスの衝突では、大変痛ましいことに3万5000人以上のパレスチナの一般市民が亡くなる大惨事となっているが、終わりは見えない。イスラエルのラファ侵攻は、米国をはじめとする国際社会の強い反対で、5月23日の時点では本格侵攻は始まっていない。だが、イスラエルは繰り返してラファ侵攻を明言している。
100万人近くの住民が避難するラファへの大規模な侵攻が始まれば、惨事が再び起こることは免れない。そして、国際社会の強い反対にもかかわらずイスラエルがラファに侵攻しようとしているのは、何よりネタニヤフ・イスラエル首相の個人的な事情が大きいと思われる。汚職問題で追及されているネタニヤフ首相は、辞任すると逮捕される恐れがある。かつ、昨年10月のハマスの攻撃を未然に防げなかったことに加え、100人以上の人質がいまだハマスに捕らわれたままであることから、日に日に辞任要求が強まっている。そのような中、政権延命には危機的状況を続けなければならない。
次にイスラエルとヒズボラの対立だが、4月1日、シリアの首都ダマスカスのイラン大使館内の建物が空爆され、イラン革命防衛隊のザヘディ准将が死亡した。彼はヒズボラとの調整責任者だった。空爆は、暗殺を謀ったイスラエルによるものとみられている。
革命防衛隊は、イラン政府の公的機関で、イスラム革命を守ることを使命とし、イランの最高指導者ハメネイ師に直結している。実は最近、イスラエルによると思われる革命防衛隊の幹部やヒズボラ関係者の殺害がエスカレートしていた。だが、イランとヒズボラはイスラエルとの全面衝突を避けるために抑制的に振る舞っていた。
しかし、国の顔ともいうべき大使館を攻撃することは許しがたい挑発だった。ことここに至ってイラン側は、報復として4月13日から14日にかけて300発以上のミサイルとドローンをイスラエル本国に発射。イランが表立ってイスラエルを攻撃したのは史上初めてだ(図)。ただし一方で、イスラエルの大規模な報復を招かないように、あらかじめ攻撃計画を内報したため、派手な攻撃にもかかわらずほとんど被害はなかった。
一枚上手だったイラン
このイランの直接攻撃に対してイスラエルは大規模な報復を準備したと伝えられる。だが10倍返しがモットーのイスラエルには珍しく、…
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週刊エコノミスト
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