インタビュー「個人株主と一緒に日本の産業界を変えていきたい」中野晴啓・なかのアセットマネジメント社長
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新NISA時代に個人はどんな姿勢で資産運用に臨むべきか。「積立王子」の愛称で知られる中野晴啓・なかのアセットマネジメント社長(セゾン投信前会長)に聞いた。(聞き手=稲留正英/荒木涼子・編集部)
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── 日経平均株価がバブル崩壊後の最高値を更新した。
■マーケット全体が4万円という大台に向け、強い意志を持っていた。必ずしも日本経済のファンダメンタルズ(経済・金融の基礎的条件)を反映して上がったとは思っていない。円安効果で足元の企業業績は良かったため、短期的には利益が成長し、株価全体が押し上げられることが正当化されていた。
問題はマクロ経済だ。日本の景況感は株価が上がっていく環境とは合致していない。今年の賃上げも無理やりで、来年も同じ流れでやるというコミットメントはどこも発していない。日本社会はデフレマインドのままで、内需は活気づいていない。
円安効果でトヨタ自動車に代表される外需輸出企業の営業利益はのけ反るほどのスケールだが、一方で、輸入価格の上昇による購買力低下という形で国民生活全体が幅広く影響を受けている。本来の富が輸出企業に移転しているだけだ。
── 一方で米国の消費は強い。
■米国の個人消費が底堅いのは、株価上昇による資産効果が非常に大きい。株式市場が楽観を続けているが故に、金利やインフレが高止まりしていても、「株が上がっているから、良いもの食べてしまおう」といった循環が続く。鶏と卵のような話だが、市場の楽観が続く間は、インフレは簡単には収まらない。結果、利下げどころではなく、利上げへの方向転換があってもおかしくない。
── そうなると日本経済はさらに厳しくなりそうだ。
■足元はそうだが、少しずつ経営者の経営効率に関する考え方は変わってきており、5年、10年という長期目線で見れば、日本の株式市場はとてもポジティブに捉えている。特に人的資本に対する意識に劇的な変化を感じている。人をしっかり育てることが経営効率に直結するというロジックで、具体的メッセージを出している企業は投資対象に値する。統合報告書など非財務情報にそういう姿勢は出てきている。
5年…
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