中国が月の裏に先手 軍民一体の“宇宙強国”存在誇示 小原凡司
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宇宙開発の分野で中国が米国を猛追している。地上の資源配分に不満を持つ中国は、宇宙分野での既得権確保を狙う。
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中国の無人月面探査機「嫦娥(じょうが)6号」が2024年6月、月の裏側の土などの試料を採取し、地球に持ち帰るサンプルリターンに世界で初めて成功した。月の裏側は地球と直接交信ができないため、中国は中継衛星「鵲橋(しゃくきょう)2号」を利用し、月の裏側に探査機を着陸させて試料を採取した後、月周回軌道上で帰還用の宇宙船とドッキングさせた。
2キロの土を持ち帰り
中国の月探査は「嫦娥工程(プロジェクト)」という名称で、04年に始まり、30年までに月面に宇宙飛行士を送り込むとしている。19年には4号が世界で初めて月の裏側に着陸し、20年には5号が月の表側の土などを地球に持ち帰った。今回の6号が持ち帰った試料は1935・3グラム。中国の宇宙開発は米国から大きく遅れていたにもかかわらず、月探査を加速させている。
中国の月探査計画は、「無人月探査」「有人月面着陸」「月面基地建設」の3段階で進められている。そのうちの「無人月探査」プロジェクトも3段階に分けて発展する戦略(三歩走)で実施されてきた。
中国は、宇宙開発を促進する理由を科学的探求としているが、資源獲得の目的もある。米国のアポロ宇宙船が月から持ち帰ったサンプルの分析を通じて、月のちりの半分は角張ったガラスの粉であり、さびることのない鉄の粒子も発見された。当時から、宇宙技術力のある国は月の資源に関心を持ち、中国も地球上の資源や地球周回軌道などの配分での遅れを取り戻そうと、月を含む宇宙開発に資源を投入してきた。
地球周回軌道と、使用できる電波周波数は限られているため、各国がそれを奪い合い、国際機関が調整しなければならない状況にある。特に、赤道上空約3万6000キロの静止軌道に乗せられる衛星の数は限られている。以前は2度間隔での配置が国際規則で定められていたが、現在は1度につき1基、合計360基の配置とすることが義務づけられており、衛星間の距離はさらに縮まっていくと考えられている。軌道の配分でも、中国を含む後発国に不公平感が生じる可能性がある。さらに、電波周波数の配分は国際的に「先着順」の原則が採用されており、より後発国に不利だ。
核融合の燃料目当て
一方、宇宙には手つかずの資源が眠っている。特に、月の鉱物資源は非常に豊富で、地球よりも多くのレアメタルを埋蔵している。月の岩石や砂には、地球上のすべての元素と数十種類の鉱物が含まれているが、そのうち6種類の鉱物は地球上には存在しない。初期の予測では、月の岩石や砂に含まれるレアアース類の資源量は225億~450億トン、ウランの資源量は約50億トンとみられている。
また、月の岩石や砂には次世代エネルギー源の一つとされるヘリウム3が豊富に含まれている。重水素やヘリウム3を使った核融合は安全であるとされ、原子力発電だけでなく、宇宙船の核熱推進にも適するとされる。中国全体の1年間のエネルギー需要を満たすために必要なヘリウム3はわずか10トンで、世界全体としても100トンとされるが、月には100万~500万トンのヘリウム3があると見積もられ、地球のエネルギー需要を数万年間、満たすことができることになる。
太陽光発電も有望視されている。中国は、太陽光やヘリウム3を使って月面で発電し、地球に送電する技術も解決したとしている。
さらに、月は宇宙観測や、地球から遠く離れた深宇宙探査のための理想的な拠点となり得る。月から他の惑星を観測すれば、より遠い領域をより鮮明に見ることができる。
また、月の引力は地球の6分の1しかなく空気もないため、月から打ち上げれば、宇宙船は地球で必要なほどの推進剤を必要としない。中国は、地球上の各種資源の分配が欧米に優位な状況であると認識し、月をはじめとする宇宙空間の各種資源に欧米諸国より先にアクセスして自国の優位を確保したい思惑があるといえる。
ISS終了で存在感?
中国の有人宇宙開発は、1992年9月21日に決定された3段階の「921工程」に基づいて進められている。その基礎は、86年に鄧小平氏が指示した「863計画」だ。
第1段階は、有人宇宙船による宇宙往復の初歩的・実験的段階であり、第2段階は、宇宙船と宇宙ステーションのドッキングおよび宇宙実験室での短期滞在である。第3段階は、長期滞在型「天宮」宇宙ステーションの建設であり、22年末までに完成させた。中国の宇宙ステーションは、現在、応用発展段階にあるとされる。
一方、日本などが参加する国際宇宙ステーション(ISS)は24年までの運用を想定していたが、米国は30年まで運用を延長することを決定した。米航空宇宙局(NASA)は31年にISSを太平洋に落…
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週刊エコノミスト
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