経済・企業 宇宙ビジネス新時代

宇宙ベンチャー 日本で4社上場 当面の商機は低軌道小型衛星にあり 中西拓司・編集部

「(2030年に運用を終える)国際宇宙ステーション(ISS)の次の有人宇宙活動全てに関係する取り組みに挑戦する。弊社の活動をフォローしてほしい」。東京・虎ノ門で7月8日に開かれた宇宙産業の国際会議。宇宙航空研究開発機構(JAXA)を24年3月に退職し、米国の宇宙企業「アクシオムスペース」に移った宇宙飛行士の若田光一さん(60)が「弊社」との言葉を連発して今の仕事を説明すると、対談相手の宇宙飛行士の山崎直子さん(53)が「若田さんが『弊社』と話すのが新鮮。本当に民間の立場で活動していることが伝わる」と応じた。

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レジェンドの転身

 同社は16年設立のスタートアップ企業。若田さんは24年4月から、アジア太平洋地域での宇宙飛行士兼最高技術責任者(CTO)として、民間宇宙ステーションの建設などに携わる。若田さんは1996~22年に計5回の宇宙飛行を経験。日本人として最長の504日、宇宙で過ごし、ISS滞在時には日本人で初めて船長を務めた。

「これまでの経験を生かして民間での活動に尽力したい」と若田さん。「日本人宇宙飛行士のレジェンド」による米新興企業への転身は、国家事業だった宇宙産業が民間へ急速に移行するとともに、人材確保競争が激しくなっていることもうかがわせた。

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 国や伝統的な大企業による宇宙開発は「オールドスペース」とされるのに対し、ベンチャーやITなど新興企業が進めるものは「ニュースペース」とされる。

 その代表格が、米実業家のイーロン・マスク氏率いる米スペースXだ。23年に世界ではロケットが212回打ち上げられたが、米国が最多の108回。そのうちスペースXが96回を占める。世界の宇宙業界ではスペースXの1強状態が続く。

 一方、日本でも宇宙関係のスタートアップ企業が増加している。一般社団法人「SPACETIDE」(スペースタイド)によると、国内には102社の宇宙ベンチャーがあり、既存の大企業や異業種からの参入も136社に上る。23年以降、4社が上場した。VC(ベンチャー・キャピタル)などからスタートアップ企業への資金流入も増加している。

 官から民への動きを国も後押しする。政府は3月、民間企業などの技術開発を支援する1兆円規模(10年間)の「宇宙戦略基金」の創設を決定。JAXAに基金を作り、公募で選ばれた企業や大学に助成金を交付する。

 米モルガン・スタンレーによると、17年時点で約3500億ドル(約56兆円)だった世界の宇宙市場は40年には1兆ドル(約160兆円)規模に成長するとされる。「基金創設は、民間も含めた宇宙産業の起爆剤になる」。6月に上場した「アストロスケール」の岡田光信社長兼CEO(最高経営責任者)はこう見る。

「衛星の星座」

 宇宙というと、惑星探査のイメージが強いが、基金は支援分野として「探査」のほか「衛星」…

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