インタビュー「国債を安易に買わないことが“日本売り”対策だ」田中隆之・専修大学教授
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大量に国債を購入してきた日銀がその脱却に向け動く時に、注意すべきことは何か。金融政策に詳しい専修大学の田中隆之教授に聞いた。(聞き手=浜條元保・編集部)
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日銀の植田和男総裁は3月にマイナス金利を解除し、長短金利操作(YCC)を撤廃、「金融の正常化」を進めている。だが、その目的や意味は必ずしも明確ではなく、さまざまな議論がある。
基本的には「金融緩和からの脱却」ではなく、長期国債をはじめとする「大量資産購入からの脱却」を図ることを主眼とすべきだ。それによって、日銀が財政優越(フィスカルドミナンス)に陥っていないことを証明する必要がある。
財政優越とは、長期金利の上昇を懸念するあまり日銀が国債購入を停止できない状況を指す。こうなると、仮に過度なインフレが発生しても日銀が金融引き締めで立ち向かえなくなる。一足先に正常化に向かった米連邦準備制度理事会(FRB)が新規国債の買い入れを停止し、償還分だけを再投資して国債の保有残高を一定に保ちながら利上げを始め、その後に再投資額を減らしている形を日銀も採用すればいいと私は考えてきた。まずは、国債の新規購入を停止する姿勢を見せるべきだ。
ところが、日銀の対応は違った。6月には毎月の国債購入減額の方針を決めたものの、むしろ買い続ける姿勢を強調している。現在の月額6兆円の購入を継続した場合、今後日銀保有国債の償還が増えていくので、残高は秋口以降横ばいから若干の減少に転じる。つまり、この先「新規の購入停止、償還分のみ購入(再投資)」とアナウンスしても実際の購入額はほとんど今と変わらない。日銀は、現在の月額購入6兆円を4兆~5兆円に減らしていくつもりかもしれないが、であれば新規購入を停止したうえで、月々の再投資額を1兆~2兆円ずつ減らす形にした方がわかりやすい。残高の縮小が可視化できるからだ。
2%物価目標の扱い
長期金利が急騰し、景気が腰折れすることを植田総裁は過度に恐れており、それに備えて柔軟に国債を購入できるようにしておきたいのだろう。だが、それが高じると、すでに財政優越の領域に足を踏み入れていると…
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週刊エコノミスト
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