新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

週刊エコノミスト Online 足りる?足りない?老後資金

シニアの「士業」デビュー 50代から行政書士や社労士に 初期費用安く自己実現が可能 横須賀輝尚

シニアでの資格取得は、老後の生きがいにもつながる Shutterstock
シニアでの資格取得は、老後の生きがいにもつながる Shutterstock

 第二の人生では“一国一城の主”に──。高齢化の進展とともに、国家資格を取って長い余生を過ごそうという人が増えている。

>>特集「足りる?足りない?老後資金」はこちら

「人生100年時代」という言葉が一般的になる契機となった世界的ベストセラー『LIFE SHIFT(ライフシフト)』が出版されたのが2016年。一方で、多くの人が「確かに寿命は伸びているのかもしれないが、100歳というのは現実的ではない」と考えている。

 しかし、現実は着実に「100年時代」を迎えている。昨年9月の厚生労働省の発表によれば、国内の100歳以上の高齢者数は、9万2139人だった。厚労省が100歳以上の高齢者の調査を始めたのが1963年。当時、100歳以上はたったの153人だった。100歳まで生きるというのは、現実のものとなってきているといえるのだ。

 つまり、かつては一般的だった「60歳で定年。後は余生をのんびり過ごす」というような計画は崩れつつある。単純計算では、60歳になってもあと40年間、生活を成立させなければならない。ただでさえ、老後2000万円問題(最近では4000万円)といわれ、老後資金が不安になる中、余生どころか本当に第二の人生のスタートをきちんと切らなければならないという時代が来ている。

一国一城の主に

 そこで注目されているのが、行政書士や社会保険労務士などの国家資格、いわゆる「士業」だ。会社を定年退職後に再雇用という選択肢もあるが、おおよその場合、給与所得は激減する。それならば、いっそのこと独立して第二の人生を、そしてやりたかった“一国一城の主(あるじ)”になろう。そういう動きが増えているのである。

 いくつか事例を紹介しよう。茨城県牛久市在住の池田憲治さん(76)は、金融機関に約40年間勤務した後、定年を1年残して早期退職した。退職時は63歳。同僚が「退職後は何もしないでのんびり暮らしたい」と引退宣言する中、池田さんは「自分がやりたかった仕事がしたい。ダイレクトにお客様に感謝されるような仕事がしたい。そして独立したい」と考えた。

 退職後、行政書士試験に挑戦。2度の受験で見事に合格した。現在は金融機関時代の経験を生かし、相続業務を中心にお金周りの相談を受けながら、顧客に貢献する行政書士事務所を運営している。まだまだ現役を続ける意向だ。

 東京都小金井市に居を構える橋本泰則さん(60)は長年製薬会社に勤めてきた。約35年の間、この会社一筋。定年を迎える60歳になる前に、兵庫県に住む高齢の母親の介護問題など家族の問題が現実化してきたのを感じた。そこで、橋本さんは考えた。「60歳で兵庫に戻っても、おそらく一定以上の収入を得られる職はないだろうし、それよりは社会に役立つ仕事がしたい。母の介護のことを考えれば、時間に融通の利く独立開業がベスト。それならば、早い段階で準備をして独立開業しよう」と。

 橋本さんは定年前の57歳から行政書士試験の勉強を始める。50代から始めた全く未知の法律分野の勉強には手を焼いたが、2度目の受験で合格。製薬会社時代の知識と経験を生かし、兵庫県で医療関係の業務…

残り1370文字(全文2670文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事