週刊エコノミスト Online 足りる?足りない?老後資金

インタビュー「ありえない“老後4000万円不足” 元気に長く働けば大丈夫」荻原博子・経済ジャーナリスト

 老後資金について情報発信している経済ジャーナリストの荻原博子さんに話を聞いた。(聞き手=安藤大介/谷道健太・編集部)

>>特集「足りる?足りない?老後資金」はこちら

── 「老後に4000万円必要」という話題が注目を集めました。

■結論から言えば、「ありえない数字」と言っていいでしょう。2019年に金融庁の報告書が元になった「老後に2000万円不足する」という話がありましたが、この2000万円に「物価上昇率3・5%が20年間続いた」ことを加味すると4000万円になるというのです。3・5%はバブル期のピーク時に匹敵するレベルです。それが20年続くというのは、無理やり作った数字としか思えません。

── これまでも「2000万円問題」を批判してきましたね。

■「2000万円不足する」という家庭のサンプルは、夫65歳以上、妻60歳以上という無職世帯です。一方で、22年の労働人口比率を見ると、65~69歳で働いている人は全体の51%です。半分を超える人が働いており、そうした家計はほとんど黒字で、無職の世帯は今や少数派です。

 こうした中で、なぜ「2000万円」という数字が出されたのかというと、金融審議会の報告書を見れば分かります。「2000万円足りない」というのは、ほんの数ページ。他は投資の話が大半です。審議会のメンバーには証券会社など投資関連の人が多く、「老後にお金が足りないから投資をしないとダメ」という方向に誘導したいための数字だったのです。こうして出された「2000万円」を基に試算した「4000万円」は、ほぼフィクションの世界と言っていいでしょう。

稼ぐに追いつく貧乏なし

── 現実には物価も上がっており、老後の資金について心配する人は少なくありません。

■あまり心配したら病気になりますよ(笑)。今は、希望があれば企業は65歳まで雇用継続が義務づけられており、会社によっては努力義務として70歳…

残り1067文字(全文1867文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

9月24日・10月1日合併号

NISAの見直し術14 長期・分散・積み立てが原則 「金融リテラシー」を高めよう■荒木涼子16 強気 「植田ショック」から始まる大相場 日経平均は年末4万5000円へ■武者陵司18 大恐慌も 世界経済はバブルの最終局面へ  実体経済”に投資せよ■澤上篤人20 中長期目線 「金利ある世界」で潮目変化  [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事