習政権3期目の3中全会が示した三つの重要政策 川島真
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7月にようやく開催に至った3中全会からは、習近平氏の野望が透ける。
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中国共産党の第20期中央委員会第3回総会(3中全会)が7月15〜18日に開催された。5年に1度の中国共産党大会で選出された約200人の中央委員による3回目の全体会議で、3中全会では主に中長期の経済政策が決定される。本来は昨年中に開かれるべき会議だった。その開催が遅れたのは次のような事情があろう。
第一に、経済については新型コロナウイルス禍からの回復に手間取り、論点の絞り込みや対応策の策定に時間を要していた。第二に、3中全会の前に開かれるべき中央経済工作会議が昨年12月にようやく開かれていた。そして第三に、中央経済工作会議で提起されたいくつかの課題と対策が、その後どのような効果、成果が出るのかを、ある程度見極めた上で開催されたのが3中全会だった。
3中全会では幅広いことが議論されたようだし、公開された文書にも多様な内容が含まれている。だが成長率の低迷、不動産価格の低迷など多くの課題を抱える中国経済の処方箋としては「劇薬」はなく、財政出動も抑制され、事態の連鎖や悪化を防ぐための地道な方策が講じられているようだ。しかし、今回出た方向性は、まさに現在の習近平政権の重要政策を反映したものとなっている。それを次の3点から見てみよう。
第一に、「中国式現代化」を実現することが強調されている点だ。文字通り中国モデルの現代化であり、国家の安全と統治の安定を最優先に掲げながら、社会の調和を維持しつつ、また温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」など、環境問題に十分配慮して経済発展を目指すというものだ。この中国式現代化は、習近平総書記がうたう「社会主義現代化」に対応した言葉だ。
「開放」より「改革」
習氏は2017年の第19回党大会で、今後の目標として49年までに「社会主義現代化強国を実現して事実上米国に追いつく」とし、中間目標に35年の「社会主義現代化の実現」を掲げた。中国式現代化はまさにこの35年に向けた標語なのであり、現在3期目の習氏が4期目、そして35年ま…
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週刊エコノミスト
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