米利下げは9月からか インフレと雇用が減速 門田真一郎
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FRB高官発言にハト派的な内容が目立つようになり、利下げの近さをうかがわせる。
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米国の食料品とエネルギーを除くコアインフレ率が再び減速し、労働市場にも悪化の兆しが出始める中、米連邦準備制度理事会(FRB)高官による利下げへの地ならしが始まったようだ。
まず、米国のコアインフレ率は昨秋〜今春の持ち直しを経て、再び2%に向けて減速し始めた。図はコアCPI(食品とエネルギーを除く消費者物価指数)の前年同月比と3カ月前比年率を比較したものだ。前年同月比の変化率は緩やかな減速基調だが、より短期的な動きを捉える3カ月前比年率ベースは、2023年8月に2.6%で底打ちした後、今年3月に4.5%まで再加速していた。これは、コアCPIのうちサービス価格が住居費、宿泊費、医療サービスなどを中心に、3月の6.8%まで加速したことによるものだった。一方、財価格はこの間、中古車などを中心に、むしろ3月がマイナス1.4%と昨年7月以降の下落基調を続けていた。
しかしコアインフレの3カ月前比年率変化は3月をピークに反転、6月はプラス2.1%まで鈍化した。個別項目では、住居費や旅行関連項目を中心に下振れ圧力が足元で強まる。当面、6月下振れ分の反動で一旦は持ち直す可能性はあるが、その後は上下変動を伴いつつ徐々にFRBの2%インフレ目標に収れんする公算が大きい。
さらに、米国の労働市場も一部で悪化の兆しが出始めている。
6月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比20.6万人増と、市場予想(ブルームバーグ調査)の同19.0万人増を上回り、時間当たり賃金も前月比0.3%上昇と市場の予想通りの結果だった。しかし家計調査によると、23年12月以降は大半の月でフルタイム雇用者数が減少し、増加分はパートタイム中心となるなど、雇用の質に悪化の兆しが出始めている。また、失業者に対する求人数の比率は新型コロナウイルス禍前の水準に戻りつつある上、採用率はコロナ禍前の水準を下回る。
こうした物価・雇用情勢を踏まえ、FRB高官発言も最近はハト派的なものが目立つが、追加的な情報を確認…
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週刊エコノミスト
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