半導体・製造装置の市場回復は始まったばかり 生成AIが別次元の進化へ 和田木哲哉
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生成AIやデータセンターの登場で半導体や製造装置業界は一層の成長が見込まれる。その一方、日本の半導体製造装置のシェアが低下している厳しい現実もある。
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半導体製造装置市場は、DRAM(一時記憶用半導体)向けが韓国メモリーメーカーの大型投資によって2024年は大きく増加し、フラッシュメモリー(長期記録用メモリー)向けが需給の改善によって25年から本格的に回復しそうだ。また、半導体製造に特化する台湾のファウンドリー企業の設備投資は足元で、期初の各メーカーの見通しよりも前倒しになっている。今後のリスクとしては、中国での半導体製造装置の内製化と、米インテルのイスラエル工場の投資凍結がある。
筆者を含む我々モルガン・スタンレーMUFG証券の調査チームはこのように考えており、7月に米サンフランシスコで開催された半導体製造装置の展示会「SEMICON West」での各半導体製造装置メーカーへの取材からも、おおむね同様の見通しが確認できた。用途別では、生成AI(人工知能)用半導体向けの装置需要は旺盛だが、スマートフォン用及びパソコン用の需要の回復は鈍い。
半導体製造装置・材料メーカーの業界団体であるSEMIは、24年の世界の半導体製造企業の設備投資を1090億ドル(前年比5%増)、25年を同18%増の1280億ドル、26年を同15%増の1480億ドル、27年を同4%増の1530億ドルと予想している。
24~27年累計では、地域別で最も製造装置市場が大きくなるのは、中国の1440億ドル、次いで韓国が1080億ドル、台湾が1030億ドルとなる。業態別では、ファウンドリーが同2959億ドル、メモリーが1576億ドルと両者で全体の80%を上回る。我々は24年の半導体製造装置市場の伸びをけん引するのはメモリー向け装置と予想している。
SEMIによると00年には世界の半導体の生産シェアが2%だった中国の半導体業界は、20年には19%になっており、25年は39%と予想されている。各国政府の補助政策によって27年は32%に低下するが、依然として世界の半導体製造シェアの3分の1を保有することとなる。
「GPT-4o」の衝撃
各半導体製造装置メーカーへの取材によると、中国の半導体メーカーは輸出規制に備え、中国製装置の調達比率を増やそうとしている。我々は米中貿易問題の深化による中国への半導体の輸出規制を、半導体製造装置市場のリスクと考えている。また、中国の半導体製造装置の内製化のために今後、半導体製造装置の部材の需要が増加すると予想する。
我々は、半導体業界も製造装置業界も市場の回復は始まったばかりで、業界は今後、さらに成長を遂げると考える。けん引役となるのはAIで、これから別次元の成長を遂げよう。生成AIの進化は著しく、米オープンAIが5月13日に発表した生成AIの「GPT-4o」は、AIの一層の進化を予感させるものだった。
ちなみに、末尾の“o”は「omni」の略称で、その意味は言語、画像、音声、動画を一つのモデルで処理できる能力があることを表す。応答速度は232ミリ秒から320ミリ秒と非常に高速で、これは「GPT-4ターボ」とほぼ同じ速度だ。
GPT-4ターボまでのモデルでは、音声を文字に変換してから理解し、回答を生成していたが、GPT-4oでは音声そのものを理解し、音声で回答ができる。さらに、音声のトーン、複数の話者の区別、背景のノイズ、笑い声、歌、感情まで理解することが可能で、ほぼ、人間と区別がつかない対話ができる。
また、米スター…
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週刊エコノミスト
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