ペロブスカイト太陽電池 事業化目前の日本企業 猛追する中国企業 西村信吾
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薄くて軽く柔軟性も高いため、壁面などにも取り付けられる日本発の太陽電池技術が、実用化目前の段階に入った。
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日本は平地面積当たりの太陽光設備容量が、2位のドイツに2倍以上の差をつけて1位となっており、太陽電池を設置可能な適地がなくなりつつある(図)。そうした中で、薄くて軽く柔軟性の高い「ペロブスカイト太陽電池」は、耐荷重の低い屋根や壁など従来は導入が困難だった場所にも、太陽電池導入を可能にするポテンシャルを有しており、適地不足の課題を解消しうる技術として注目されている。
2009年に日本で生まれたペロブスカイト太陽電池は、日本企業が先行して開発を進めており、積水化学工業や東芝エネルギーシステムズなどが、25年度の事業化を目指している。積水化学は薄くて軽いペロブスカイト太陽電池の特徴を生かし、倉庫やビル壁面へ取りつける実証事業の開始を複数発表した。
また、東芝は薄さ・軽さの特徴を生かしたフィルム型ペロブスカイト太陽電池の開発だけでなく、シリコン太陽電池と組み合わせることで、両者の吸収波長の差を利用して変換効率を上昇させるタンデム型の開発も行っている。パナソニックホールディングスは、ペロブスカイト太陽電池をガラスに均一に塗布する技術に強みを有しており、「発電するガラス建材」へ26年に参入するとしている。
室内利用も想定しながら開発を行う企業も存在する。京都大学発ベンチャー「エネコート・テクノロジーズ」の開発するペロブスカイト太陽電池は、日射量が少ない日や屋内でも相対的に高い発電効率を示すことから、「IoTセンサー」(インターネットと接続した製品のセンサー)用の電源など、室内利用向けの展開もターゲットとしている。
主原料のヨウ素も脚光
ペロブスカイト太陽電池は、使用する材料面からも注目されている。主原料であるヨウ素は、日本が世界産出量の3割を占めており、中でも国内シェアトップの伊勢化学工業は、世界シェアが15%と世界的に見てもトップシェアを誇る。資源の少ない日本で、ペロブスカイト太陽電池は価格・生産量の両面で、安定供給が期待できる純国…
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週刊エコノミスト
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