原油「増産」で年末75ドルへ下落 大幅な供給不足は解消へ 小菅努
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世界の原油の需給バランスは今年10~12月期に均衡状態に移る可能性が高い。
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原油価格は今年の下半期に入ると、徐々に上値が重くなる見通しだ。原油の指標価格であるWTI原油先物は、4月12日の1バレル=87.67ドルが年間最高値となり、年末時点で75ドルを中心に70~80ドルの水準までレンジが切り下がる展開を想定している。
世界の原油需給バランスは、7~9月期に引き締まることで在庫取り崩しが進む見通しだが、10~12月期には均衡状態に移行し、原油価格の上昇トレンドは沈静化する可能性が高い。国際エネルギー機関(IEA)は7月に発表した月報で、「(原油価格が高い)暑い夏を過ぎると、(原油価格が下落する)涼しいトレンドになるだろう」と総括している。
7~9月期は、北半球の諸国で行楽シーズンによる旅行や観光に関連したガソリンやジェット燃料など、輸送用エネルギー需要の拡大が見込まれている。石油輸出国機構(OPEC)の推計では、7~9月期の世界の石油需要は、4~6月期に対して日量111万バレル増える見通しだ。この間、OPECと非加盟産油国で構成する「OPECプラス」の協調減産政策に変化はなく、米国のシェールオイルなどの増産を前提にしても、主に需要サイドの要因で世界の石油在庫取り崩しが進む可能性が高い。
需要次第で70ドル割れも
10~12月期は世界石油需要がさらに44万バレル増える見通しだが、このタイミングでOPECプラスは段階的な減産縮小を計画している。OPECプラスは今後の市場環境によっては、この計画を見直す可能性も示唆しているが、当初計画では3カ月合計で日量54.3万バレルの減産縮小(増産)が行われる予定になっており、年末に向けて大規模な供給不足は解消に向かう可能性が高い。
原油価格の下振れ要因として注目されるのは、中国を筆頭とした世界経済の動向だ。2024年の世界石油需要見通しに関しては、OPECの前年比225万バレル増の予測に対して、IEAは97万バレル増の予測と、大きく異なる推計値を出しており、IEAの見通しが正しければ70ドル割…
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週刊エコノミスト
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