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経済・企業 鉄道新時代

鉄道の経営改革 コロナ禍後も続くスリム化 不動産は回転型ビジネスモデルで 枝久保達也

 コロナ禍による需要急減は人口減少の前倒しだった。将来を見据えて、コロナ禍で進められた鉄道会社の改革は緩みなく継続されているが、その弊害も起きている。

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 新型コロナウイルス感染拡大は「第11波」に達したが、昨年5月の「5類移行」で非常事態としての「コロナ禍」は一応の終息を迎えたといってよいだろう。社会経済活動の正常化で鉄道利用も急速に回復したが、完全に元通りにはなっていない。各社は利用減が一時的なものではないとの判断から、終電繰り上げや減便、運賃値上げ、有人窓口縮小などを早い段階から断行した。そして今後の人口減少を見据え、改革はコロナ禍が終息しても緩むことなく推進されている。

 東京都では2040年ごろまで人口が増加する見込みだが、首都圏も人口減少社会は人ごとではない。東京23区の人口は45年ごろまで増加が続き、都心30キロメートル圏内は50年ごろまで人口を維持する自治体が多いが、圏外は2~3割減の自治体がほとんどで、首都圏鉄道事業者の経営に影響を与える。

 鉄道事業は人件費や保守費用、減価償却費など収入の多寡にかかわらず必要な固定費の割合が高いため、減収はそのまま減益に直結する。例えばJR東日本の23年度単体営業収益は、コロナ禍前と比較して約6%の減収だが、営業費はほとんど変わっていないため、営業利益は35%の減益となった。

 また1都3県の生産年齢人口(15~64歳)は、00年ごろの2411万人をピークに、30年ごろまでは96%程度の水準を維持するが、40年に89%、50年に83%とその後は急速に減少する見込みだ。鉄道事業の施設、車両、人員は運行本数が最も多いラッシュ時間帯を基準にそろえているため、需要に見合った規模にスリム化しなければ、資本費、営業費は抑制できない。その意味でコロナ禍における通勤需要の急減は人口減少の前倒しであり、両者が連続した問題であることが分かるだろう。

開発のスピードを高める

 大きな成長が見込めない鉄道事業から、東京一極集中を背景に成長が期待される不動産開発などの「成長分野」へ投資の比重は移っていくが、その中で求められるのが資産効率だ。これまでも鉄道事業者は駅ビルや観光地などの開発を進めてきたが、そのビジネスモデルは賃料で投資資金を回収する長期保有型モデルが中心だった。

 しかし固定資産は減価償却費などの固定費を生むだけでなく、長期保有の間にコロナ禍のような突発的な事態で収益性が急激に低下する財務リスクがある。そこで、保有資産を最小化し、バランスシートの健全化を図る「アセットライト経営」が鉄道事業にも広がりつつあり、JR東日本はコロナ禍前から資産効率を重視し、総資産利益率(ROA)を経営計画の数値目標に設定している。

 ただ、資産の売却だけではリスクマネジメントにとどまってしまう。そこで一体的に進められるのが、資産をファンドなどに売却し、獲得資金を成長分野に再投資する「回転型ビジネスモデル」の導入だ。長期保有型モデルは投資回収に時間を要し、開発のスピードに限界がある。これに対して開発と売却を次々に進めることから「回転型」や「キャピタルリサイクル」などと呼ばれる手法だ。

 駅ビルなど鉄道施設と一体化した用地・物件の売却は困難だが、例えば西武ホールディングス(HD)は赤坂プリンスホテル跡地を再開発した大型複合ビル…

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週刊エコノミスト

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