経済・企業 鉄道新時代

主要18社診断 非鉄道収益で業績に明暗 訪日客増えるも人口減の逆風 和島英樹

 インバウンドの恩恵がある一方で、人口減少の影響を受ける鉄道各社は「非鉄道事業」の拡大が明暗を分けそうだ。

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 鉄道大手の業績はおおむね堅調に推移している。新型コロナウイルス感染症が季節性インフルエンザと同じ5類に移行し、国内での人流の回復やインバウンド(訪日外国人)の増加などで乗客が回復基調にあるためだ。

 2025年3月期の純利益予想で前期比増益を見込んでいるのは、鉄道大手18社中8社で、コロナ禍前の19年3月期と比べると11社が当時の利益を上回るとされる。大手鉄道各社は鉄道以外にホテルや商業施設などを運営しており、インバウンドの増加は収益面の追い風となっている。

 一方、働き方改革によるリモートワークの普及などで定期券を購入する人が減少し、逆風になっている面もある。25年3月期に増益が見込めない鉄道会社は、定期の輸送人員減を定期外収入で賄えていない可能性が大きい。

 鉄道各社の株価は低迷している銘柄が多い。インバウンドなどの好材料が「織り込み済み」ととらえられている面があるためだ。生産年齢人口の減少で低迷しそうな鉄道会社もある一方、鉄道収入以外も含めて業容の拡大が続く企業があり、銘柄の選別が一層進みそうだ。

(和島英樹〈わじま・ひでき〉経済ジャーナリスト)

(注)データはいずれも8月2日現在。予想PER(株価収益率)は12カ月先。▲はマイナス。時価総額は億円未満を四捨五入。HDはホールディングス(出所)ブルームバーグより編集部作成

JR東日本(9020)

・株価 2,639円・時価総額 29,937億円・予想PER 13.84倍・PBR 1.08倍・ROE 8.5%・年初来騰落率 ▲2.61%

 鉄道の国内最大手。東日本が地盤。山手線や中央線など首都圏在来線で稼ぐ。駅ビル「アトレ」、ホテル「メトロポリタン」、駅ナカなど鉄道以外でも優位性。好立地で集客力も高い。2025年3月期は北陸新幹線の延伸などが寄与。観光需要を取り込み連続増益へ。人件費増などをこなす。株価はさえないが見直し余地が大きい。

JR西日本(9021)

・株価 2,650円・時価総額 12,935億円・予想PER 12.3倍・PBR 1.15倍・ROE 9.7%・年初来騰落率 ▲9.86%

 ホテルや商業施設、駅ナカなど鉄道以外の展開も強い。2024年3月に北陸新幹線の金沢―敦賀間が開業。今後は新大阪への延伸が計画される。25年3月期は新幹線・在来線が堅調で、ホテルや百貨店なども伸び増益。大阪駅隣接のJPタワー大阪が7月開業。25年4月から京阪神都市圏で運賃引き上げへ。株価は底入れ感が浮上。

JR東海(9022)

・株価 3,298円・時価総額 33,969億円・予想PER 8.37倍・PBR 0.76倍・ROE 10.2%・年初来騰落率 ▲7.98%

 東海道新幹線と在来線12本を保有。東…

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