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国際・政治 トランプvs.ハリス

トランプ2.0はNATOとウクライナの試練に 台湾情勢で米中緊張の激化も 渡部恒雄

ウクライナのゼレンスキー大統領。トランプ氏が大統領復帰なら試練(2024年7月、ワシントン)(Bloomberg)
ウクライナのゼレンスキー大統領。トランプ氏が大統領復帰なら試練(2024年7月、ワシントン)(Bloomberg)

「米国第一」を掲げるトランプ氏が復帰すれば、日本にも防衛費の増額を求めてくるのは確実だ。

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 トランプ前大統領とハリス副大統領の外交安全保障は、米国の同盟国や世界との関わり方について、対照的なものとなるだろう。トランプ氏は「アメリカ・ファースト」という内向きの考え方を取るため、ウクライナ支援、気候変動などの国際協調からは距離を置いて内向きになり、同盟国にはより多くの負担を求め、軍事的な関与と在外米軍の規模を極力縮小しようとするだろう。

強まる内向き路線

 トランプ前政権では、マティス国防長官、ケリー大統領首席補佐官などの伝統的な現実主義者が、トランプ氏と綱引きをしながら、内向き政策に対抗して、政権の政策に最低限の連続性と安定をもたらした。「トランプ政権2.0」では、第1次政権の経験から学んだトランプ氏が、自分の意思をより強く反映させるために、トランプ氏の考え方に共鳴するスタッフで固められ、内向き路線が強まるだろう。

 基本姿勢として、米国に「ただ乗り」している同盟国に相応の金銭的な負担を求め、それを達成しない同盟国には「米国は同盟の義務を果たさない」という圧力をかけることを辞さないだろう。特に、ロシアのプーチン大統領などの独裁的指導者に親近感を持つトランプ氏は、欧州の北大西洋条約機構(NATO)に対して厳しい姿勢を見せるはずだ。トランプ前政権では、ドイツ駐留の米軍の部分撤退を決定したが、NATO加盟国が防衛費に公平な負担をしなければ、米軍は欧州から引くという脅しにかけるだろう。

 ウクライナ支援についても否定的であり、欧州が費用すべてを負担すべきという立場をとるはずで、NATOとウクライナにとって、トランプ氏再登板は厳しい試練となるだろう。

 インド太平洋においては、現在のバイデン政権の対中政策以上に強硬になるだろう。トランプ政権2.0のスタッフは対中強硬派で固められるはずだ。バイデン政権とは異なり、スタッフは中国に対抗するために欧州に余計なエネルギーを使うべきではないという人物がおり、ウクライナ支援の継続にも悪影響をもたらすだろう。

 対中強硬を掲げるが故に政権スタッフは日本の存在は重要だと考えるだろう。日本に防衛費負担増は求めるが、中国をみすみす利するような在日米軍の撤退というような選択肢はないはずだ。かたや韓国は、トランプ氏が北朝鮮の金正恩氏との交渉のために、在韓米軍の撤退をオプションとして考える可能性があり、この点がトランプ政権2.0の日韓への姿勢の違いといえる。したがってバイデン政権が立て直した日米韓の協力枠組みについても、振り出しに戻る可能性が十分ある。

 中台の緊張については、トランプ政権に入るスタッフは、親台湾派が多いが、トランプ氏自身が台湾防衛に興味がないため、有事の際の武力介入のリスクを取りたくないトランプ氏と、スタッフとのせめぎあいとなる可能性は十分にある。逆に、トランプ政権2.0の親台湾派が「台湾独立」のような強硬姿勢を支持して米中の緊張を高める可能性も否定できない。トランプ政権の台湾への姿勢は、その姿勢が定まっていないことが大きなリスクだ。

 日本政府は2027年度に防衛費を国内総生産(GDP)比で2%に増やす方針だが、トランプ氏とそのスタッフは、対中対抗のためには「3%が必要」と一段の増額を要求する可能性は十分にある。すでに1期を経験したトランプ氏にとって、次の政権は最後の政権となるため、外交で自身のレガシーを作りたいと考えるはずだ。その外交政策のレガシーを、自身に降りかかっている多くの刑事訴追に対して免責や恩赦をする理由に使う可能性も十分にある。

 トランプ氏にとっては、ウクライナ支援停止を圧力にウクライナでの停戦を行うことや、北朝鮮の金正恩総書記との核開発断念のための合意などは、レガシーの中で…

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週刊エコノミスト

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