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投資・運用 NISAの見直し術

“植田ショック”から始まる大相場 日経平均は年末4万5000円へ 武者陵司

 7月末に株価やドル・円は乱高下したが、企業利益は好調に推移している。現在は株価や企業利益と実質消費が乖離しているが、日本の相対的な好調は今後も続くため、大相場が始まる可能性が高い。

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武者陵司(むしゃ・りょうじ)武者リサーチ代表 1949年9月生まれ。73年横浜国立大学経済学部卒業後、大和証券に入社。88年大和総研アメリカでチーフアナリストとして米国のマクロ・ミクロ市場を調査。97年ドイツ証券調査部長兼チーフストラテジスト、2005年同社副会長を経て、09年株式会社武者リサーチを設立、現在に至る。

 7月31日の日銀のサプライズ利上げは、8月1日から5日までの3営業日で日経平均株価を7643円(20%)暴落させた。しかし、8月6日から16日までに急落から6604円、下落幅の86%が取り戻された。このV字回復は、株価急落がファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に基づいたものではなかったことを示唆している。株価乱高下の背景から解説しよう。

 第一は世界的な株価調整だ。米国株式(S&P500)は年初来で20%上昇した後に6%下落した。これは循環的調整の範囲内の動きといえる。共和党大統領候補トランプ氏の銃撃事件やバイデン大統領の立候補辞退のタイミングで米国株のリード役が変わった。大手ハイテク株が売られる一方、減税や規制緩和などトランプ氏の政策の恩恵を受ける小型株やエネルギー株が買われた。また、米国の景気減速と利下げが視野に入り、米国経済ハードランディング(景気急減速)説も取りざたされた。

 第二に円高への急進展で、円安・日本株高に賭けていたヘッジファンドが、円キャリー・ポジション(円売り・ドル買い)の巻き戻しを迫られ、円売りとペアで買い建てていた日本株の先物を売り込んだ。政府・日銀の介入と相次ぐ政治家の「円安阻止のために利上げをすべし」との発言が為替市場の潮目を変えた。

 第三に7月末、前述した日銀の意表を突く利上げで日本のマクロ経済政策に対する不透明感が一気に広がった。政策当局に対する信認が大きく崩れ、8月5日(月)には日経平均が1987年のブラックマンデーを超える4451円も暴落した。

名目成長に追い付く

 株価やドル・円の乱高下に加えて、人々を悲観に陥れている理由は、生活実態が一向に改善されてこなかったからだ。実質個人消費支出を振り返ると、14年4月の消費税増税(5%→8%)直前の14年1~3月の310兆円がピークで、その後10年間、一度もそれを上回っていない(図)。24年4~6月期でも10年前のピークに比べ4%減の水準にある。この間企業利益は2.2倍、株式時価総額は3.3倍、一般会計税収は1.6倍だったので、いかに個人生活が取り残されてきたかが分かる。

 では株価や企業利益が「砂上の楼閣」なのかと言うと、そうではない。8月15日に発表された2024年4~6月期GDP(国内総生産)統計によると、日本人が稼ぐ所得総額(名目GNI〈国民総所得〉)は647兆円、前年同期の630兆円から2.7%増、前々年同期の593兆円から9.1%増と鋭角的拡大が続いている。

 実質GDPがここ2年間550兆円で全く成長していない中で、なぜ名目GNIが急成長できたのか。第一に物価上昇により名目GDPが拡大したことが挙げられる。第二に海外からの所得収支黒字が大きく増加したからである。

 好調な業績・株価と低調の実質消費との乖離(かいり)について、武者リサーチは実質GDPと消費が成長率を高め、名目成長に追いついていくと予想する。

 第一の理由は24年後…

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