「金利ある世界」で資産形成の潮目も変化 ポートフォリオ見直しでリスク管理を徹底しよう 深野康彦
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インフレの定着に伴い、金融市場の潮目が変わりつつある。今後の資産形成や資産防衛は、インフレや金利上昇を前提にポートフォリオの構築を考える必要がある。
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年初から堅調に上昇してきた日本株に試練が訪れた。日経平均株価は7月の高値からわずか1カ月で25%超の急落となった。肝を冷やした投資家も多いだろう。急落の背景は専門家が検証しているので譲るが、今後、市場が正常化すれば、日銀が追加利上げのアクセルを再び踏む可能性は否定できない。追加利上げを行えば政策金利は0.5%になると考えられ、十数年続いた金利のない世界から、「金利のある世界」に明確に変わることにほかならない。まさに潮目にいる。
目安は「100-年齢」
言い換えれば今後の資産形成や資産防衛は、金利があることを前提に商品(銘柄)選びやポートフォリオ(資産構成)の構築を考える必要がある。金利がない世界では投資のアクセルを思い切り踏み込んでも間違いとはいえなかったが、金利がある世界ではアクセルを踏み込み過ぎると想定以上のリスクを被るかもしれないのだ。リスク管理がより重要になる。
リスク管理では、保有する金融資産全体で、株式や投資信託など「元本が保証されていない商品=投資商品」にどれくらいの割合を振り向けるかが大事だ。厳密にいえば、いつの時代、金利の有無にかかわらず金融資産全体で配分割合を考える必要があるが。
例えば、これまで投資を一切行っていない人が新NISA(少額投資非課税制度)デビューをしたとしよう。自身の全金融資産のうち、一部を投資資金にするとする。この投資資金全てで、人気銘柄「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー、以下「オルカン」)」を積み立て購入する場合、投資資金だけを見るとオルカンは100%株式で運用される投資信託なため、リスクの取り過ぎといわれるケースがあるだろう。
半面、金融資産全体で考えればオルカン以外は全て預金や個人向け国債などの元本保証の安全確実な商品だ。仮にオルカンが金融資産全体の10%となっても、金融資産全体では安全確実な商品が90%で、過度にリスクを取っているわけではなくなる。
保有する金融資産のうち何%を投資に振り向けるかは個々人のライフプランやリスク許容度によって異なるが、筆者は便宜上「100-年齢」が投資商品の配分の上限と答えるようにしている。年齢が50歳であれば「100-50歳=50%」が投資商品に振り向けてもよい上限になる。あくまでも目安で、リスク許容度などの個々人の事情を組み入れ、保守的であれば、投資資産に40%、積極的なら60%など、配分割合を変えていけばよい。だが、積極的な人ほどリスク過多になりがちなので抑えめにした方がよいのはいうまでもない。
金利のある世界に変わると述べたが、「預金金利は依然として1.0%にも満たないではないか?」といわれそうだが、1.0%を超える預金の登場は追加利上げ(=政策金利0.5%)があるまで待つ必要があるだろう。「それなら金利を過度に意識する必要もないのでは?」とさらなるツッコミもありそう…
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週刊エコノミスト
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