投資・運用 いまこそ始める日本株

座右に置きたい個別株投資必読の6冊 尾藤峰男 

 株式投資で成功するには実践だけでなく、読書を通じ達人の知恵に学ぶことも重要だ。

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 個別株投資はおもしろい。自分が選んで買った株が上がっていけば、うれしいものである。しかし、ここから大きな分かれ道になる。株価に目が行き、いま売ったらいくらと皮算用し、1割、2割の利益で売ってしまうか。あるいは、その会社の成長を期待して、持ち続けるか。この投資手法の差は大変大きい。前者は短期売買、後者は長期投資である。短期売買で、たとえ一定の利益を得たとしても、次に買った株で利益を得られるかはわからない。利益を獲得し続けるのは極めて難しい。

 一方、これはいい会社と選んだ株を、10年、20年持ち続ければ、その会社の成長に連れて、株価はどんどん上がっていく。ここで一つの例を挙げよう。当社の顧客に、クレジット大手米ビザの株を、2008年3月の公開時に初値で買った人がいる。その人は16年半たった今でも、このビザ株を保有している。いまでは株価は19.3倍(円換算では26.8倍)に上昇し、配当利回りは、円の取得コストで、当初0.7%だったのが、増配を続けているので、いまでは20%を優に超えている。ビザ株を「これから2倍にでもなれば」と買う人はたくさんいる。そうなった場合、当社の顧客のビザの上昇率は、為替が現在と同水準であれば、50倍を超えてくる。

 長く持っていれば、加速度的に上昇幅が大きくなるのだ。そして、このような成果は、短期売買では決して得られず、長期投資によってのみもたらされる。長期投資の視点でいい会社を選ぶ(見込みのない会社を選ばない)ことは、社会全体をよくしていく原動力となり、報われるレベルも大きくなる。ここに挙げた書籍は、いずれも、長期投資のスタンスの重要性を強く前面に出している。いずれも個別株投資の座右の書としてふさわしい書籍である。

バフェットに学ぶ

『賢明なる投資家』ベンジャミン・グレアム著(パンローリング)

 ウォーレン・バフェットは、19歳の時に、この書を読み、投資に開眼したと、折に触れていう。著者のグレアムは、まさにバフェットにとっての師匠。グレアムは、これまで主流だった株価の値動きを追って利ザヤをとるやり方を否定し、会社本来の価値に投資する姿勢を主張した。バフェットは、その教えを礎として、94歳のいまに至っているといってよい。グレアムの投資手法は、割安(バリュー)株投資。会社の本来の価値から株価が割安になっている株式に投資して、本来の価値に戻るのを待つというもの。その割安の程度をマージン・オブ・セーフティー(安全域)と名付けた。そして、市場が低迷しているとき、勇気をもつことを強調する。また市場を「ミスター・マーケット」と呼んだ。市場は、常に価格(株価)を提示してくるが、それに飛びつくことはない、こちらに選択する権利があると話す。マーケットに同調するなということである。さらに一般の投資家が株価の動きを予測してもうけることは不可能として、短期売買をいさめる。また10銘柄から30銘柄の優良株に分散投資することを勧めている。要は、グレアムの投資手法は、防御的で、手堅い投資手法といえよう。

『バフェットからの手紙』第8版ローレンス・A・カニンガム著(パンローリング)

 毎年2月最終週に出る、米バークシャー・ハサウェイ社のアニュアルリポート冒頭に、市場関係者や世界中の投資家が待ち望む「株主への手紙」が掲載される。これは、バフェット書き下ろしの株主へのメッセージである。この「株主への手紙」とバークシャー・ハサウェイ株主総会のみを、バフェッ…

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