“人口爆発”は起きず 出生率低下と高齢化は世界規模に 加藤久和
有料記事
世界の総人口は80億人を超えた。インド、アフリカ、米国は今後も人口増が続くが、日中は大きく減少する見通しだ。
>>特集「歴史に学ぶ世界経済」はこちら
国連の報告書によると、世界の総人口は西暦1年に3億人程度、19世紀初頭でも8億〜11億人だった。産業革命を契機に急増し、20世紀初めにはおよそ16億人に達した。さらに、国連が今年公表した「世界人口推計」(以下「国連推計」)では、1950年の世界総人口は24.9億人、75年は40.7億人だったとした。
その後も世界の総人口は増加を続けたものの、70〜80年代に危惧された人口爆発には至っていない。18世紀の英経済学者、トマス・マルサスが主張した人口過剰が食糧難を招くという「マルサスの罠(わな)」も、技術の進歩などによって免れている。もちろん、地球環境のように楽観できない問題はあるものの、人口爆発の懸念は薄らいでいるのが現状である。国連推計によれば、今年の世界総人口は81.6億人に達した。
人口爆発に至らなかったことに大きく影響したと考えられるのは、世界全体で出生率が低下していることだ。いくつかの国について過去50年程度の人口の変遷を要約してみよう。
日本は50年代後半から70年代前半まで、高度経済成長と同時に人口増を記録し、67年には総人口が1億人を超えた。若年人口を中心に労働力人口が増加して成長率が高まる「人口ボーナス」の恩恵も受けた。その後は少子化が進んで総人口が減少に転じ、人口に占める高齢者比率が高まって経済成長を阻害する「人口オーナス(負担)」にも直面している。
米国の総人口は75年、2.2億人だったが、その後の50年間、順調に増加しており、現在は3.5億人程度となっている。先進国の中では例外的に人口減少の兆候はない。中南米などからの移民の流入や、人種にかかわらず出生率が比較的高いことが背景にある。ヨーロッパ50カ国・地域は出生率の低下に伴い、75年の6.8億人から今年の7.5億人へと、緩やかな増加にとどまっている。
低下する乳幼児死亡率
75年の総人口ランキングを見ると、1位の中国は9.2億人、2位インドは6.1億人だった。中国の人口規模は長い間、世界最多だったが、2022年にインドが追い抜いて世界最多となった。今年はインドが14.5億人、中国が14.2億人となっている。
中国政府は80年、人口増による経済の逼迫(ひっぱく)を緩和しようとして「一人っ子政策」を導入した。出生率は低下し、近年は人口増加の速度が低下している。中国政府は15年、一人っ子政策を廃止したが、出生率の改善は見えていない。
今後はどうか。国連推計によれば、世界の総人口は増加が続くが、増加速度は次第に緩やかになる。それによれば、今から60年後の84年には102.9億人をピークに減少に転じ、2100年には101.8億人にとどまる(図)。世界全体で出生率が低下していることが主な要因である。国連は15年の推計で2100年の総人口を112.1億人とし、その後も増加が続くとしていた。
世界全体の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)を…
残り1623文字(全文2923文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める