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資源・エネルギー 歴史に学ぶ世界経済

石油価格は80~100ドル水準で推移か CO₂ゼロにはなお時間 岩瀬昇

黒海に面するジョージア・バトゥミ港の原油タンカー。エネルギー安全保障が世界の重要課題になっている(2024年5月)(Bloomberg)
黒海に面するジョージア・バトゥミ港の原油タンカー。エネルギー安全保障が世界の重要課題になっている(2024年5月)(Bloomberg)

 ロシアのウクライナ侵攻によって経済のグローバル化が停滞し、2050年の温室効果ガス排出ネットゼロ目標はさらに遠のいた。石油価格は今後も下落は見込みにくい。

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 2014年の夏には1バレル=100ドル程度で推移していた原油価格は、年末に向け下落して半値の50ドルになってしまった。当時、米石油最大手エクソンモービルのレックス・ティラーソン最高経営責任者(CEO、17年トランプ米大統領に請われて国務長官に就任)は「油価は40~120ドルで推移するだろう」と述べていた。

 あれから10年。石油市場はどのように展開したのだろうか。20年の新型コロナウイルス禍による「需要蒸発」の危機を乗り越えた石油市場だが、基底には依然としてシェール革命とパリ協定とが存在している。まずは過去30年の米国産標準油種WTI原油先物価格の推移を見ながら考えてみよう(図1)。

 00~10年代は中国の都市化・産業化により石油需要が急増し、油価も高騰した。00年から23年にかけて世界の石油消費量が35%増加する一方、中国の消費量は3.5倍になった。

 1998年、一介の掘削業者ジョージ・ミッチェル氏が水圧破砕法でシェール(頁岩(けつがん))層からの経済的ガス生産に成功してシェールガス革命が始まった。当初は主流の採掘方法ではなかったが、保守的な経営のエクソンが09年、米国最大のシェールガス会社XTOエナジーを410億ドルで買収したことで、業界がホンモノと認知するようになった。そして、油価の高騰によりガスと比べると掘削コストが高いシェールオイルも、シェール層から水圧破砕法で経済的に生産することができるようになった。

 かくしてシェールガス革命は単にシェール革命と呼ばれるようになり、米国の(広義の)石油生産を急増させた。10年には日量772万バレルだったが、15年1278万バレル、20年1649万バレル、そして23年には1936万バレルへと2.5倍に急増している。

 一方、92年のブラジル・リオデジャネイロにおける地球サミットで第一歩を踏み出した地球温暖化対策は、97年に京都議定書として一定の結実を見せた。だが、米国や中国が参加せず、残念ながら失敗に終わった。

「ネットゼロ工程」の波紋

 そして15年、ようやく全世界が参加してパリ協定の調印にこぎつけた。2100年における地球の気温上昇を産業革命前対比2度(後に1.5度)以下に抑えることを目標としたものだ。その後、具体的な方策として、21世紀半ばに温室効果ガス(GHG)の排出をネット(吸収分を差し引いた正味)でゼロにするとの目標が打ち出された。

 日本を含む主要先進国はこぞって50年を「排出ネットゼロ目標年」とした。中国やロシア、あるいはサウジアラビアは60年、インドは70年を目標年とするなどばらつきはあるが、世界中が排出ネットゼロ…

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