資源・エネルギー 脱炭素

需要伸びるバイオ航空燃料 大量生産と割高コストに課題 岩間剛一

コスモ石油の堺製油所で建設が進むSAFの生産施設(2024年9月)(共同通信)
コスモ石油の堺製油所で建設が進むSAFの生産施設(2024年9月)(共同通信)

 2050年の航空機のカーボンニュートラル達成が掲げられ、航空会社は今年から温室効果ガス排出削減が求められる。乗客に負担を求める動きも広がっている。

原料は廃食用油に穀物、藻、間伐材

 国内外の石油会社などが、天ぷら油などの廃食用油や藻、トウモロコシといった原料から作られるバイオ燃料のSAF(持続可能な航空燃料)の生産・調達に力を入れている。航空機に関して2050年にカーボンニュートラル(温室効果ガス=GHG=排出実質ゼロ)が掲げられる中、SAFはカーボンニュートラルな燃料とみなされているためだ。

 コスモ石油は堺製油所(大阪府)において、日本初となるSAFの量産プラントを24年度中に完成させる。国内の外食チェーンから廃食用油を回収し、年間3万キロリットルのSAFを生産する。ENEOSも、和歌山製造所で27年に年間40万キロリットルのSAFを生産し、出光興産も山口県で28年度までに25万キロリットルのSAF生産を始める予定だ。

 ENEOSは昨年10月に国内での需要縮小を受けて和歌山での石油精製機能を停止しており、SAF生産への転換を決めた。脱石油の大きな潮流の中で、石油企業は既存の製油所の生き残りと再利用を懸け、SAF生産に活路を見いだそうとしている。また、伊藤忠商事は今年9月にはSAFを韓国から輸入し、成田空港に供給するなど、各社が日本におけるSAF事業の強化を図っている(表)。

 世界的には、50年の航空機のカーボンニュートラル実現に4億5000万キロリットルのSAFが必要であるとされ、SAFの最大手フィンランドのネステが、シンガポールに年間100万トンのSAF供給拠点を構築している。英シェルも、日本航空(JAL)や米デルタ航空などにSAFを供給する契約を締結している。

 国際民間航空機関(ICAO)と国際航空運送協会(IATA)が、50年に航空機のカーボンニュートラル達成を掲げており、世界の航空会社は今年以降、GHG排出の19年比15%削減が求められる。そのため、今後のSAFの世界需要の予測は50年の4.5億キロリットルへと急速に増加する一方(図)、22年のSAF生産量は30万キロリットル程度と世界のジェット燃料消費量の0.1%程度に過ぎず、まだまだSAFの伸びる余地は大きい。

日本は「30年に10%」

 航空機は乗客1人を運ぶ際のGHG排出量が鉄道の6倍に達するが、航空機燃料は高いエネルギー密度を必要とするため、自動車と異なり電動化は極めて難しい。航空機は限られた機内のスペースにより小さな体積でより軽い重量の燃料を搭載する必要があり、東京─ニューヨーク間の場合、機体が…

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