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経済・企業 書評

経産省は前大臣の置き土産「全国書店ヒアリング」を生かせるか 永江朗

 経済産業省は10月4日、「関係者から指摘された書店活性化のための課題(案)」を公表した。同省の書店振興プロジェクトチームがヒアリングした内容を整理したもの。同省のサイトで読むことができる。

「粗利率を抑制する流通慣行(粗利率と小売価格)」「再販売価格維持制度によりコスト転嫁が困難」「委託制度による返品率の高さ・適正配本の必要性」「書店規模を優先した配本」「書店における注文書籍の到着の遅れ」など、ほとんどが何十年も前から業界内で言われていたことである。むしろ問題の本質は、これらが何十年も解決されなかったことにあるのではないだろうか。

「課題(案)」は、それが直ちに具体的な施策に結びつくものではない。経産省は11月4日までパブリックコメントを募集している。「その結果を踏まえて、政府及び民間の関係者でシェアし、今後の対応を検討していく」と「課題(案)」は結ばれている。課題が広く一般にも共有されるのはいいことだ。

 石破茂内閣の発足にともなって、経産大臣は斎藤健氏から武藤容治氏に交代した。斎藤氏は「街の本屋」議連(街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟)に所属し、書店振興プロジェクトチームを立ち上げた。武藤氏は記者会見で「議連があるということも見たことはあるのですけれども、今まで承知をしてなかったのですが」と述べており、書店や書物、出版産業に対する関心や見識があるとは感じられない。過剰な期待はできない。

 経産省は先の「課題(案)」とともに、地域経済産業局による全国30店舗あまりの書店ヒアリングについても公開している。北は北海道の「コーチャンフォー」(釧路市他)や「こども冨貴堂」(旭川市)から、沖縄県の「金武文化堂」(金武町)や「TABINEKO BOOKS」(沖縄市)まで。登場する書店は多様で、大手や全国的チェーン店もあるが、児童書専門店や独立系書店、ブックカフェもある。富山県立山町のローソン立山町役場店のように書店やスーパーの閉店を受けて町が誘致した書店併設コンビニもある。このヒアリングには課題解決のヒントが詰まっている。


 この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。


週刊エコノミスト2024年10月29日・11月5日合併号掲載

永江朗の出版業界事情 書店活性化へ、経産省が調査内容公開

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