インタビュー「欧米よりPBR低い日本企業に“お得感”」岡本祐太・東海東京インテリジェンス・ラボ投資戦略部マーケットアナリスト
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外国人投資家や海外の事業会社が、日本株や日本企業への関心を高めている。カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールによるセブン&アイへの買収提案のように、次に標的となる日本企業はどこか。東海東京インテリジェンス・ラボ投資戦略部の岡本祐太マーケットアナリストに聞いた。(構成=編集部)
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「セブンのブランドをはじめ店舗・物流網や商品開発力が魅力的な上、円安も加わり株価も割安という判断が、クシュタールの買収提案に至った理由だろう。つまり、買収後の経営次第で事業のシナジーや株価の上昇が見込まれ、欧米に比べて割安な株価の企業が次のターゲットになる」
岡本氏はこう指摘し、株価が割安かどうかを見極める指標の一つとしてPBR(株価純資産倍率)を挙げる。日米欧の主要株価指数ベースで見た足元のPBRは、米S&P500で平均約4.8倍、ストックス欧州600で同約2倍に対して、東証プライムは約1.3倍(いずれも今期予想PBR、予想はブルームバーグ)。欧米投資家からみれば、平均的な日本株(東証プライム)は割安な状態ということだ。
ウォシュレットの魅力
東証は2023年3月、「『資本コストや株価を意識した経営』の推進に関するお願い」を要請。平たくいえば「株主から預かった資金を効率的に活用して成長事業を拡大し、結果、PBRを改善させてほしい」との東証のメッセージだ。その効果もあり改善は進むものの、現時点でも東証プライムの約半数は1倍割れが続く。
「私の注目は、2020年の新型コロナ発生前の株価を大きく下回った状態にある一方、依然高いブランド力を持つ企業。例えば、資生堂。コロナ禍前まで時価総額は3兆円を超えていたが、現状は半分程度。足元のPBRも約2.5倍とコロナ前では7倍程度まで評価されていたことを踏まえると、十分に低い。中国での販売不振や事業構造を抜本的に見直す必要性が生じたことなどが株価低迷の要因とされるが、一方でブランド力は健在。中国の景気も改善期待が高まる。進行中の構造改革が進展すれば、業績改善は十分期待できる」
コロナから急回復し、それ以上の勢いを見せるインバウンド(訪日外国人)に注目する企業選びも可能だろう。
「来日して本場で体験した日本食やさまざまな“おもてなしサービス”を自国でも味わいたいというニーズは強い。スシローやくら寿司といった外…
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週刊エコノミスト
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