経済・企業 セブン・ショック
株価指標で分かるセブン&アイがお買い得な理由 松田遼
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以前から指摘されていた利益率と資産効率の改善が急務なことを両社の財務比較で明らかにする。
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カナダのアリマンタシォン・クシュタールが8月、国内コンビニ大手3社の一角であるセブン-イレブン・ジャパンを傘下に置くセブン&アイ・ホールディングス(HD)に対して買収提案したと報道された。その後、一時セブン&アイ株は急騰する場面もあった。
売上高、総資産規模などの事業、財政基盤ではセブン&アイがクシュタールを上回る。セブン&アイからみれば、今回の買収提案は小が大をのむようなものだ。しかし、株式時価総額ではクシュタール(約7.6兆円)がセブン&アイ(約5.6兆円)を上回る。
買収側のクシュタールは1980年設立のカナダ企業で、北米、ヨーロッパ、アジアなど31カ国で事業を展開。北米ではガソリンスタンド併設のコンビニおよびグローバルではサークルKブランドなどのコンビニを運営する。ガソリンスタンド併設事業の収益性は高いが、脱炭素問題で事業拡大は限定的だ。クシュタールは、現在も創業メンバーの強力なリーダーシップにより、企業買収を駆使してグローバルでのコンビニ事業拡大を積極化させている。
大手商社の後ろ盾なし
売上高(連結ベース)でみると、セブン&アイは11.4兆円(2024年2月期)は上場企業として日本最大の小売企業である。これにイオン(9.5兆円)、ファーストリテイリング(3.1兆円)が次ぐ。
株式投資で重視されるPBR(株価純資産倍率)を確認しよう。PBRとは、当該企業の株式時価総額が純資産の何倍に相当するかを示す指標で、大きいほど株式市場での評価が高いことを示す。PBRが1倍を下回る企業は当該企業の株式時価総額は、清算価値を下回るほどに評価が低いといえる。
セブン&アイのPBR(1.5倍、9月24日時点)は1倍を超えているものの、他の国内大手小売企業との比較では必ずしも高いとはいえない。百貨店大手の三越伊勢丹HD(1.4倍)にほぼ並ぶが、イオン(3.3倍)、ファーストリテイリング(7.0倍)との差は大きい。買収提案をしたクシュタールは4.0倍である。
次に株式時価総額はどうか。株式市場における当該企業の評価であり、その数値が大きいことはエクイティファイナンス(新株発行などの資金調達)の可能性も含め大きな財務上の余力を示す。前述したように、クシュタールがセブン&アイを上回る。ただし、3年前の為替レートを当てはめると、両社の現在の株式時価総額はほぼ同じ水準だ。
そもそもコンビニエンスストアは米国発祥の小売り業態であるが、日本では1973年にイトーヨーカ堂(当時)がセブン-イレブンを、75年にダイエー(同)がローソンの国内展開を始めて以来、海外とは異なる独自の業態として成長してきた。その独自性としては豊富な品ぞろえや24時間営業、コピー機やチケ…
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週刊エコノミスト
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