活発化する日本企業のM&A 過去最高の年4000件台で推移 編集部
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世界経済が混沌とする中でも、高水準が続く日本企業のM&A。事業再編や競争戦略上、今後も増えそうだ。(編集部)
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昨年8月、経済産業省は「企業買収における行動指針」を策定した。これは、公正な企業買収のあり方を示した方針で、企業価値を高め、株主利益になるM&A(企業の合併・買収)の活性化を目指すものだ。買収提案を受けた企業は取締役会に諮り、真摯(しんし)な買収提案には真摯な検討が必要となる。経営陣の判断だけで公表することなく拒絶できない環境が整備された。
カナダの流通大手アリマンタシォン・クシュタールが8月、セブン&アイ・ホールディングス(HD)に買収提案を行ったことが明らかとなった。セブンは経産省の指針を踏まえ、社外取締役をトップとする特別委員会を設置し、クシュタールと交渉を始めている。
グローバル化
日本におけるM&Aは過去どのように推移してきたのだろうか。
M&A調査会社レコフデータによると、現在M&Aは第3波(2011年〜)といわれるほど活発化している(図)。11年3月の東日本大震災で国内原発が停止し、高い電力料金や円高に苦しめられた日本企業は、国内の再編と同時にサプライチェーン(供給網)の再構築に向けて海外進出を加速させた。さらに12年末に始まったアベノミクスに伴う景気拡大とグローバル化が国内外の事業再編に拍車をかけている。11年1687件からコロナ前の19年まで毎年M&Aの件数は前年を上回り、19年には4088件となった。
コロナのパンデミック(世界的大流行)で、20年は前年を下回ったものの、21年以降は4000件台という高い水準で推移し、ロシアによるウクライナ侵攻があり、世界情勢が混沌(こんとん)とする22年のM&Aは過去最高の4304件となった。24年上半期は2321件と半期ベースで過去最多のペースで進み、8月までで3000件を突破した。
買収の組み合わせにも変化の兆しが読み取れる。第1波(1985〜90年)のバブル期は、小売業の再編に加えて日本企業の海外進出が増加。「買い手(日本企業、IN)-売り手(海外企業、OUT)」が大半を占めた。バブル当時は、松下電器産業(現パナソニックHD)による米ユニバーサル映画買収など好調な日本経済を背景に、日本企業による外国企業の大型買収が相次いだ。この時期のM&Aは年間260〜758件…
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週刊エコノミスト
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