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国際・政治 中国

中国が景気刺激策に乗り出した 谷村真

国慶節には上海の繁華街、南京東路に多くの買い物客も訪れたが……(10月2日) Bloomberg
国慶節には上海の繁華街、南京東路に多くの買い物客も訪れたが……(10月2日) Bloomberg

 中国の経済政策はこれまで消極的だったが、9月以降は転換の動きがみられる。今後の焦点はより大規模な財政出動があるかどうかへと移っている。

背景に社会不安も

 9月中旬以降、中国では景気刺激策が相次いで発表・報道されており、金融・財政政策の見直しが進んでいる。市場は政策転換を好感し、一時株価は大幅に上昇したが、その後は息切れ感もみられる。景気対策の効果は、10月下旬以降に明らかになるとみられる財政刺激策の中身次第だ。

 IMF(国際通貨基金)は今年5月後半に年次審査のため現地にミッション団を派遣したが、報告書では、中国当局の見通しは「楽観的」で、「5%の成長目標達成に自信あり」と記されている。不動産不況はあるが、工業生産は強く、既存の景気対策で十分という立場だ。6月に筆者は中国を訪れたが、当時、現地では楽観論が強く、同様の論調を耳にした。

 ところが、9月に入ると、中国国内でさまざまな経済政策の選択肢がオープンに議論され始めるなど雰囲気が変わってきたようだ。例えば、国務院発展研究センター元副所長で著名なエコノミストである劉世進氏は10兆元の大型経済刺激策を提案している。

 政策転換が議論され始めた背景の一つは、政府が歳入の落ち込みを実感しつつあるからだ。歳入実績(広義の一般政府ベース、2024年1~8月)は前年同期比6%減となり、新型コロナウイルス禍の20年以来の低水準に落ち込んでいる。消費が弱く、増値税(消費税)税収が落ち込んだためとみられ、赤字目標順守のために歳出を抑制した結果、一部の地方では公務員賃金の削減や公共サービスの停止があったとされる。

 社会不安に対する懸念も広がっているとみられる。筆者が雇用・所得に対する信頼感とエンゲル係数を指数化して、社会の安定度をみると、直近の指数(24年4~6月)は悪化しており、コロナ禍でロックダウン解除を決めた水準に近付いている(図1)。実際、9月に深圳市で日本人児童が、登校中に刃物を持った男に襲われ死亡した痛ましい事件が記憶に新しいが、同月末に上海市で無差別殺傷事件も発生した。報道されていない事件もあるとみられる中、経済政策転換の背景には、当局の危機意識の高まりがあるのだろう。

「2兆元」で現金給付も?

 最初のサプライズは9月24日に国務院が突如記者会見を開催し、金融緩和措置を発表したことだ。中国人民銀行の潘功勝総裁に加え、金融規制当局のトップが列席し、合同で一連の支援策を発表。内容は、預金準備率の0.5ポイント引き下げ、政策金利の0.2ポイント引き下げ、住宅ローンの金利・頭金比率引き下げ、株式市場と不動産市場への流動性供給などである。

 続いて、中国共産党中央政治局は9月26日に月例会議を開催したが、景気への懸念から通常と異なるタイミングで経済問題が議論されたのが二つ目のサプライズだ。会議の要旨で、政府はカウンターシクリカル(景…

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週刊エコノミスト

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