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中国も関わるタンザニア標準軌鉄道が開通 対アフリカ投資は「量から質」へ 齊藤雄祐
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中国は国際的な政治力向上などを目的にアフリカ支援を重視するが、貿易不均衡も大きな課題として浮上する。
課題はアフリカ諸国の対中貿易赤字
今年9月にタンザニアの最大都市ダルエスサラームを訪れると、ひときわ大勢のタンザニア人であふれかえっている場所があった。同月に首都ドドマまでの区間が開通したばかりのタンザニア標準軌鉄道のダルエスサラーム駅である。ほのかにペンキのにおいが残る真新しい駅舎の中で、大きな荷物を抱えている人、おめかしをした子どもを連れて楽しそうに会話をしている家族連れが集い、待合室は活気と熱気で充満していた。
タンザニア標準軌鉄道はダルエスサラームからドドマを抜け、隣国のルワンダやブルンジの国境付近までをつなぐ総延長距離約1560キロの建設プロジェクトである。これまで車で約7時間かかっていたダルエスサラームとドドマ間の移動時間が約3時間半に短縮され、運賃もエコノミークラスで3万1000シリング(約1700円)と庶民に届く価格帯になっている。
タンザニアはアフリカ最高峰のキリマンジャロ山(5895メートル)を擁するアフリカ東部の国で、人口6743万人。農業が基幹産業で、金などの輸出のほか観光業も盛ん。ただ、1人当たり国民総所得(GNI)は1210ドル(2023年)と世界銀行の「低中所得国」に分類される。一段の経済発展に向けて力を入れるのが標準軌鉄道網の整備で、8月の開通式はサミア大統領が出席して華やかに行われた。
このタンザニア標準軌鉄道の建設には、トルコと中国が深く関与している。ダルエスサラームから北西部のイサカまでの第1~4フェーズの建設をトルコの大手建設会社ヤピ・メルケジ、タンザニア西部の区間である第5フェーズ(イサカ─ムワンザ間)と第6フェーズ(タボラ─キゴマ間)の建設を中国の土木工程集団(CCECC)が担っている。
アフリカの地域開発をみるうえでは、とりわけ中国の存在感は大きい。中国のこれまでの対アフリカ融資の推移(コミットメントベース)は00年代以降、巨大経済圏構想「一帯一路」に沿って、豊富な天然資源を有するアフリカへの進出を強化し、特に、エネルギー・資源開発、道路や空港・港湾といった輸送インフラ整備、防衛などの分野を中心に、16年にピークとなる計288億ドル(約4.3兆円)に達している。
9月に「協力フォーラム」
しかし、その後、インフラ事業において採算が取れず、一部の国では債務返済能力が著しく低下した。その後の新型コロナの流行と相まって、中国は不良債権化を恐れて新規融資を抑えるようになり、22年には10億ドル(約1500億円)にまで落ち込んだ。23年は増加に転じたものの、総額は約46億ドルと最盛期のおよそ6分の1の水準にとどまっている。
こうした状況の中、「中国アフリカ協力フォーラム」が今年9月4~6日、北京で開催され、中国側は習近平国家…
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週刊エコノミスト
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