2024年3月期決算 預金残高減少の衝撃 佐々木城夛・編集部
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全254信金の2024年3月期決算がまとまった。そこから見えてくるのは、業界を取り巻く大きな構造変化だ。
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信用金庫が預金積金残高の減少に直面している。『週刊エコノミスト』編集部がまとめた全国254信金の2024年3月期決算(単体)では、3月末時点の預金積金残高が前期末比で減少したのは37.8%の96信金にのぼり、増加したのは158信金にとどまった。特に規模が小さな地方の信金で預金残高の減少が目立ち、相続などに加えて金利上昇も進み、より利便性や金利の高い他金融機関への預金流出が進んでいるとみられる。
信金の預金の減少傾向は、業界全体の数値にも表れている。信金の預金合計は今年5月末、前年同月比0.1%減の162.1兆円と、03年2月末以来約21年ぶりに減少した。日銀の統計によれば、金融機関業態別の実質預金(預金合計から手形、小切手を差し引いたもの)に譲渡性預金を加えた平均残高は、大手銀行では今年に入り前年同月比1~2%台、地銀では1%台の増加が続くものの、信金は0~0.1%台と鈍い。
信金は普通預金や定期預金といった銀行と同様の金融商品のほか、毎月決まった金額を積み立てる定期積金という商品も扱う。これらを合計した24年3月末の預金積金残高を各信金ごとに前年同月末と比較すると、減少率が最も大きかったのは朝日(東京)の10.55%。続いて西京(同)5.25%、高山(岐阜)4.92%、青い森(青森)3.99%と並ぶ。
朝日や西京、減少率8位の大阪(大阪)など都市部の信金も減少率上位に入るが、新型コロナウイルス禍の「ゼロゼロ融資」(実質無担保・無利子)の返済のほか、相場の上昇を受けた投信販売の増加も影響しているとみられる。一方、減少率5位の田川(福岡)は総資産710億円、7位の広島みどり(広島)は1000億円強と、規模の小さな地方の信金も上位に並んでいるのが大きな特徴だ。
人口減少に直面する地方では相続が発生した際、東京など大都市圏に住む相続人が預金を相続することが多く、地方の信金には常に預金の流出圧力がかかっていた。また、地域経済の疲弊も影を落とす。信金への出資会員数も13年まで930万人を超えていたのが、今年8月時点では872万人まで減少した。さらに、今年1月の新NISA(少額投資非課税制度)開始やネット銀行の台頭も預金減少に追い打ちをかけたとみられる。
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週刊エコノミスト
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