新しい国会の景色は広がるか 選択的夫婦別姓法案が試金石 与良正男
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第2次石破茂内閣発足後、初の本格論戦の場となる臨時国会が始まった。先の衆院選で自民、公明両党が過半数を割り込む敗北を喫した結果、衆院予算委員長などのポストを立憲民主党に譲り渡す中での審議となる。
焦点は、今年度補正予算案や、各党の隔たりが今も大きい政治資金規正法の再改正などの懸案を、満身創痍(そうい)の石破首相が処理できるかどうかだけではない。
「自民党1強」時代が終わり、これまでと違う新しい国会審議の姿を示せるのかどうか、である。その意味で野党も大きな責任を負っているといっていい。
実態は「事前審査」
「もう事前協議で物事が決まるのではなく、国会審議の表の舞台で、熟議によって一致点を見いだしていく」
立憲民主党の野田佳彦代表は11月11日の同党両院議員総会で、こう力説した。
その通りだろう。これまでは政府が、国会が始まる前に予算案や法案を与党に提示し、そこで了承されさえすれば、後の国会審議でどんな問題点が指摘されようと、ほとんど無修正で成立してきた。
「事前審査が国会を形骸化させている」といわれて久しい。この仕組みの見直しは、1990代年以降、政治改革の課題の一つだったにもかかわらず、とりわけ安倍晋三政権時代は、国会をないがしろにする傾向がますます顕著になったのが実情だ。
だが衆院選での敗北で、事前審査という裏舞台で調整し、最後は「数の力」にものを言わせて国会で強行採決する手法は、簡単には使えなくなったということだ。
すべての野党が反対すれば、政府の法案は通らない。そろって内閣不信任決議案に賛成すれば、不信任案は可決されて、石破首相はたちまち、内閣総辞職か解散か、の土俵際に立たされる。少数与党政権の難しさは、ここにある。
いうまでもなく、そこで石破氏と自民党が頼っているのが玉木雄一郎代表率いる国民民主党だ。
自民、公明両党が国民民主党の主張を早々と受け入れて、所得税がかかる「年収103万円の壁」の引き上げに合意したのは当然だった。引き上げ幅は年末の税制改正に向けて協議するという。
政策協議を否定はしない。ただし、こうして国会が始まる前から調整するというのでは、事前審査と何ら変わらないのではないか──。そんな疑問は拭えない。
国民民主党は衆院選で4倍増を果たしたといっても28議席に過ぎず、国会での質問時間は少ない。だから事前協議で主張した方が、マスコミにも大きく取り上げられる……。国民民主側には、そんな計算もあるのだろう。
実は玉木氏の路線には、党内の一部や支持する労組の中にも異論がくすぶっていることを指摘しておく必要がある。
支持労組にとって主戦場は衆院選よりも、大手労組の代表を送り込む参院選だ。玉木氏の不倫スキャンダルが発覚する前から、「玉木氏は、はしゃぎ過ぎだ。石破内閣の延命に手を貸しているという批判が強まれば、来夏の参院選は戦えない」と不安を漏らす労組幹部がいたのである。
スキャンダルへの批判をかわすため、玉木氏はこれまで以上に政策で譲歩できなくなった、という見方もある。自民党と国民民主党の協議は、「何が国民に有益か」という政策論を離れて、石破氏と玉木…
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週刊エコノミスト
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