トランプ2.0の嵐の中でインフレ率2%+αを目指す米中銀 小野亮
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見えない中立金利と次期政権という大きな不確実性が米国の中央銀行を待ち構える。
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2025年の米金融政策には、「中立金利(経済や物価に対して引き締め的でも緩和的でもない実質金利に予想物価上昇率を加えたもの)」と「トランプ次期大統領の経済政策」という二つの大きな不確実性と向き合う難行が待っている。加えて金融政策の枠組みレビューも進めていくことになっており、海外の中央銀行や金融市場参加者に新たな材料を提供しよう。
米連邦公開市場委員会(FOMC)は、24年終盤ですでに、雇用最大化と物価安定をほぼ両立し、数年前には不可能と思われた米国経済のソフトランディング(軟着陸)に成功しつつある。
24年11月会合の議事要旨には「参加者たちは、現在の労働市場の状況が委員会(FOMC)の長期目標である最大雇用とおおむね一致していると判断している」ことが示された。インフレに関する記述では、2%目標への進展が予想よりも遅れることを一部の参加者が懸念しているだけであり、企業の価格決定力の低下など、ディスインフレの材料がいくつも列挙され、インフレ再燃を示す具体的な動きは全く報告されていない。
10月の個人消費支出デフレーターで測ったコアインフレ率を3カ月前、6カ月前、12カ月前と比較した年率値でみると、2.3〜2.8%のレンジとなっており、目標の2%をやや上回るところにある。
ChatGPTはハト派
FOMCでは毎年一部の投票メンバーが交代し、政策スタンスに影響を与えることがある。
投票権を持つのは米連邦準備制度理事会(FRB)理事7人と常任のニューヨーク連銀総裁、そして11地区連銀総裁の中からローテーションで選ばれる4人である。地区連銀は地理的に四つのブロックに分けられており、各ブロックから1人が交代で投票権を持つ仕組みになっている(図1)。
25年には、以下のように投票権を持つ総裁が交代する。総裁間の利下げへの積極さの違いについては、最近の発言をChatGPTに分析させた結果に基づくものである(図2)。
【北東部ブロック】コリンズ氏(ボストン)は、前任のバーキン氏(リッチモンド)より利下げに積極的。
【中西部ブロック】グールズビー氏(シカゴ)は最も利下げに積極的。なお前任のハマック氏(クリーブランド)には目立った発言がない。
【中南部ブロック】ムサレム氏(セントルイス)は前任のボスティック氏(アトランタ)より利下げに積極的。
【西部ブロック】シュミッド氏(カンザスシティー)は前任のデイリー氏(サンフランシスコ)より利下げへの積極性がやや低い。
総合的に、24年組より25年組の方が利下げに対して積極的という結果である。
平均インフレ・ターゲティング
25年の米金融政策を巡る重要な論点の一つに、「FOMCは2%を下回る水準までインフレ率を下げるのか」というも…
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週刊エコノミスト
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