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教養・歴史 よみがえる石川経夫

同期が語る石川経夫「経済学者になるために生まれてきた人」橘木俊詔・京都大学名誉教授

 大学や大学院で同期の岩井克人氏、奥野正寛氏、橘木俊詔氏。先輩の八田達夫氏。後輩の吉川洋氏。愛弟子の玄田有史氏。6人それぞれが経済学者として、また、一人の人間としての石川経夫を熱く語る。(聞き手=佐々木実・ジャーナリスト/浜條元保・編集部)

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橘木俊詔(たちばなき・としあき) 1943年生まれ。67年小樽商科大学商学部卒、69年大阪大学大学院経済学研究科修士課程修了、73年ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士。京都大学経済研究所助教授、同大教授などを歴任。『日本の経済格差』(岩波新書)で98年度エコノミスト賞受賞。

 純粋に勉強が好きで、経済学者になるために生まれてきたような人だった。ジョンズ・ホプキンス大学は一学年約20人の小さな大学で、日本人は石川君と私だけだったから、一緒に食事もしたし、ビールを飲みながら語り合ったりもしたが、彼は世間話をほとんどせず、勉強の話が多かった。

 当時の米国は、ベトナム戦争に対する反戦運動が激しくなっていた。石川君は東大紛争では全共闘の闘士だったと話には聞いていたが、私が知るかぎり米国留学時代にベトナム反戦運動に参加したことはなかった。彼には「勉強のために米国に来た」という明確な目的があり、それ以外のことには見向きもしなかった。

 石川君は、ケネス・アローに学ぶために途中からハーバード大学に移った。彼はジョンズ・ホプキンス時代にはラディカル・エコノミクスとは関係していなかったから、ハーバード大学に行ってから、スティーブン・マーグリン、サミュエル・ボウルズ、ハーバート・ギンタスなどのラディカル・エコノミストと交流を持つようになったのだろう。石川君とは書いた論文をお互いに送り合っていたから、彼らと一緒にやっていることは知っていた。

ベッカーに対抗する理論

 石川君は理論家としては珍しく、所得の分配や家族などをはじめから研究…

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週刊エコノミスト

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