国際・政治 中国動乱前夜

中国にプルトニウム増産力 2030年までに核弾頭1000発保有説 小林祐喜

軍事パレードで北京の天安門広場を進む大陸間弾道ミサイル(2019年10月) ロイター=共同
軍事パレードで北京の天安門広場を進む大陸間弾道ミサイル(2019年10月) ロイター=共同

 高速増殖炉を稼働させ、核兵器製造につながるプルトニウム保有量を増やす中国。日本の安全保障への影響は大きい。

>>特集「中国動乱前夜」はこちら

 米大統領選を制した共和党のトランプ前大統領が2期目に入るのを前に、核戦力増強を巡る中国の動向が関心を集めている。トランプ氏が1期目に軍事面を含め、中国に強硬な政策を展開したことが核軍拡の一つの要因とみられているためである。中国の核弾頭数は2024年1月現在、00年代初頭の倍以上の500発に達したとされている。核兵器に最適な超高純度のプルトニウムを大量に抽出できる高速増殖炉をロシアの技術支援を受けて稼働させたことと併せ、日本の安全保障に直接影響する中国の動きから目が離せない。

 世界の軍事支出や核戦力を分析し、毎年報告書を公開しているストックホルム国際平和研究所によると、中国の核弾頭数は19年、290発と推定されていた。21年に350発に増強され、24年1月時点で500発に達し、急速に核軍拡を進めている。

契機は対中敵視政策

 中国が核戦力の増強を進める背景の一つとして、トランプ政権1期目の対中国敵視政策が挙げられている。トランプ政権は18年、「地域侵略に対する信頼できる抑止力を維持する」(核態勢の見直し=NPR)として、低威力核巡航ミサイルを開発・配備する方針を示すなど、中国を意識した核オプションの多様化を打ち出した。また、関税の大幅な引き上げなど通商政策でも中国に強硬姿勢を示した。

 中国が「核心的利益」と位置付ける台湾周辺や南シナ海における活動を抑止しようとする米国の姿勢に対し、戦力の均衡が必要と判断し、中国は軍備増強を図っているとみられる。

 今後の核戦力増強は現在のプルトニウム保有量がカギを握る。世界の核物質の動向を調査している核分裂性物質に関する国際パネル(IPFM)は24年4月、各国のプルトニウム保有量の最新データを公表した(表1)…

残り1604文字(全文2404文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

1月14日・21日合併号

中国・動乱前夜16 学生20万人が深夜サイクリング 指導部が警戒する「動乱」の兆し■安藤大介19 インタビュー 柯隆 東京財団政策研究所主席研究員 米中対立は激化必至 習政権に解見つからず20 経済成長 GDP押し下げるトランプ関税 長引く不動産不況に追い打ち ■三浦 祐介22 消費不振長期化 不動 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事