国際・政治 中国動乱前夜

中国社会に漂うきな臭さ 「中華民族の偉大なる復興」への失望が生む“戻気”とは 興梠一郎

車の暴走で35人が死亡した体育施設前で献花をする市民ら(広東省珠海市で2024年11月12日)
車の暴走で35人が死亡した体育施設前で献花をする市民ら(広東省珠海市で2024年11月12日)

 「逃げる」富裕層。絶望する若者。経済停滞が生んだ中国社会の現実を、社会で広がる隠語から読み解く。

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 中国社会で数年前に「タンピン族」という言葉が注目された。躺平(タンピン)とは中国語で「寝そべる」という意味だ。「家は高くて買えない。結婚もできない。仕事は疲れる。もう、寝てしまおう」ということで、若者を中心に広がった。

 当時は、新型コロナウイルス禍のさなか。経済はロックダウン状態にあり、社会には閉塞(へいそく)感や息苦しさが漂っていた。その半面、コロナ禍が終われば景気は良くなるという期待感もあった。「仕方がないから我慢しよう」という感じだっただろう。

 だが、コロナが終わっても期待した通りには景気は全く良くならず、今はタンピンどころか仕事もない。超エリートである大卒者すら職がない。

海外に出る富裕層と市民

 そうした中で、海外に行く方法がある人は海外へと行っている。「潤」という言葉が中国で話題になったことが、これを象徴している。発音記号にすると「RUN」となり、「逃げる」という意味で隠語的に使われている。

 国外へ出て行く方法には2種類ある。日本に来る場合を例に挙…

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週刊エコノミスト

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