経済・企業 中国動乱前夜

スピード感がすさまじい中国の宇宙開発 世界初の天王星・海王星探査計画も 鳥嶋真也

天空宇宙ステーションに向かう長征7号Y7ロケット Bloomberg
天空宇宙ステーションに向かう長征7号Y7ロケット Bloomberg

 中国の宇宙開発は再使用ロケットなど最新トレンドをキャッチアップ。一部の領域では米国に先行する可能性もある。

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 近年、中国の宇宙開発は大きな発展を続けている。かつては、米国やソ連(ロシア)の歴史をなぞるように後追いを続けてきたが、近年では米国に伍(ご)するようになり、宇宙ステーションや月面探査などで競争を繰り広げている。ベンチャー企業の動きも目覚ましく、新技術のキャッチアップが進む。さらに、世界初や高い独自性を狙った計画も進んでいる。

 中国の宇宙開発は、1970年4月に人工衛星の打ち上げに成功して以来、着実な発展を続けてきた。その内容は、長らく実利用、すなわち通信・放送衛星や地球観測衛星、測位衛星の打ち上げや運用など、国家の発展や国民の生活に直接役立つものが中心だった。2000年代に入ると、有人宇宙飛行や月・火星探査といった、科学的かつ国威発揚を狙ったミッションが行われるようになったが、基本的には米露が過去に行ってきたことの後追いだった。

 しかし、十分な技術力を付けたことを背景に、近年では米国に伍する宇宙開発を展開しつつある。 例えば、米国や日本などが運用する国際宇宙ステーションに対抗するかのように、22年には独自の宇宙ステーションを建造し、常時3人以上の宇宙飛行士が滞在して実験などを行っている。

 また、米国や日本などは共同で、27年の有人月探査を目指す「アルテミス計画」を進めているが、中国も30年までに宇宙飛行士を月に送り込むことを表明しており、そのための超大型ロケットや新型宇宙船の開発が進んでいる。

 宇宙軍事の分野でも、米国に勝るとも劣らない多種多様な軍事衛星を打ち上げているほか、衛星攻撃兵器の開発も進めており、米国や日本などは自国の衛星の防衛(抗堪(こうたん)性向上)などの対応を強いられている。

 予算面では、22年の宇宙関連予算は約120…

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