中国当局の経済対策にトランプ関税が冷や水 三浦祐介
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不動産市場の低迷が続く中国経済にとって、トランプ米次期政権の追加関税は新たな試練となる。
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中国では、長引く不動産不況に加え、米大統領選でのトランプ氏再選により、悩みの種が新たに増えた。これに対して、中国指導部は追加の経済対策で乗り切ろうとしているようだ。不動産不況を主とする「内憂」、米中摩擦という「外患」、そして政府の経済対策の動向を踏まえ、今後の中国経済を展望する。
不動産不況に関しては、販売床面積が2022年から23年にかけて前年減を記録した後、24年も減少となる見込みで、不況の長期化に伴い、経済への影響は広がっている。不動産建設の減少が企業業績の悪化を招き、雇用・所得環境の悪化や不動産価格下落による逆資産効果から家計の消費が冷え込んでいる。また、土地需要の減少によって地方の土地財政が悪化し、地方政府の隠れ債務処理や公務員給与の支払いなどにも支障が生じるようになった。その結果、経済全体として需要不足が深刻化している。
拭えぬ買い控え心理
不動産市場悪化を食い止めるべく、中国政府は、住宅売買に関する規制緩和などの需要喚起策や、デベロッパーが抱える在庫住宅等の買い取り、未完成物件の引き渡し促進のための資金支援など、対策を段階的に強化してきた。もっとも、その実行は、地方政府やデベロッパー、金融機関などに委ねられており、それぞれの利害や思惑が交錯するなか進展のペースは遅い。デベロッパーの資金繰り悪化に対する懸念等を背景とした消費者の買い控え心理は払拭(ふっしょく)されていないのが実情だ。
しかし、不動産対策が一段と強化された24年10月から11月にかけて、住宅販売が持ち直しの動きを見せている(図1)。その傾向が持続するかは依然として予断を許さないが、わずかながら明るい材料が出始めてきた状況だ。
不動産問題に一条の光明が見えてきた矢先、先行きに暗い…
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週刊エコノミスト
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