日本の創薬力再生へ 新興バイオ企業も呼び込むエコシステム構築へ 前田雄樹
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欧米で承認されている薬が日本では開発されず、承認申請もされていない「ドラッグロス」が続く。日本の創薬力を高めることができるか。
ドラッグロス解消へ政府が規制緩和に動いた2024年
2024年、製薬業界では政策的に大きな追い風が吹いた。薬価制度(医療用医薬品の公定価格=薬価の決め方を定めた制度)について、イノベーションに対する評価を充実させる方向で見直され、新薬開発を促すための規制緩和や支援策も次々と打ち出された。
こうした動きには二つの課題に対する危機感がある。一つはいわゆる「ドラッグロス」の拡大で、もう一つは日本の医薬品産業の国際競争力の低下だ。
政府は24年7月、国内外の製薬企業や業界団体を首相官邸に招いて「創薬エコシステムサミット」を開催。岸田文雄首相(当時)は「日本を世界の人々に貢献できる創薬の地としていくことに政府がコミットしていく。医薬品産業を基幹産業と位置付け、必要な予算を確保して取り組みを具体的に進めていくことを国内外に約束する」と宣言し、ドラッグロス解消と創薬力強化に向けた戦略目標を発表した。
小児、希少疾病に痛手
ドラッグロスは、欧米で使える新薬が日本では開発すらされていない状況を指す。欧米で承認されているものの日本では未承認の新薬は23年3月時点で143品目あり、このうち6割に当たる86品目が国内で開発に着手されていない。開発未着手品の半数以上は海外のベンチャー企業が開発したもので、国内に治療薬がない疾患を対象とした薬剤や小児向け薬剤、希少疾患の治療薬などが多く含まれる(図)。
日本では00年代初めごろ、新薬の承認が欧米から大きく遅れる「ドラッグラグ」が問題となった。この時は、複数の国で同時に実施する国際共同治験への日本の参加を促したり、新薬の承認審査を担う医薬品医療機器総合機構(PMDA)の体制を強化して審査期間を短縮したりするなどの取り組みによって、…
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週刊エコノミスト
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