経済・企業 安全保障
民間のインテリジェンス能力向上目指し「セキュリティークリアランス」始動へ 北島純
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今年5月までに施行される「重要経済安保情報保護活用」制度。機密情報に触れる人物は、外国政府との関係や家族の国籍・帰化歴などを細かく調査される。
機密情報扱う人物・企業を政府が調査
「セキュリティークリアランス制度」がいよいよ始動する。半導体など経済安全保障上の重要物資や電力・情報通信・金融といった重要インフラを扱うビジネスで機密情報に関わる場合、当該人物または企業(事業者)が機密情報を漏えいするおそれがないという「信頼性の認証」(適格性評価)を政府が行う制度だ。昨年5月に成立した重要経済安保情報保護活用法が、今年5月17日までに施行される予定だ。現在、政府内で運用基準の詳細が詰められており、日本企業も対応を迫られることになる。
日本にはこれまで「特定秘密保護」制度が存在したが、防衛、外交、特定有害活動(スパイ活動)防止、テロリズム防止の4分野に限定されていた。主として防衛・公安のプロが対象で、国家間で機密情報を共有するための前提としても機能していた。今回の「重要経済安保情報保護活用」制度はこれを拡張し、米中新冷戦下で焦点が当てられた経済安全保障(安全保障を重視した経済・技術の規制・活用)の観点から、広く民間企業に裾野を広げるものだ。
両者は機密情報の保全強化という点で共通性があり、一体的(シームレス)な運用が想定されているが、後者が民間ビジネスに及ぼす影響は広範にわたる。
上司・同僚・知人に質問も
具体的な運用は次のようなものが想定されている。第一に、防衛大臣や経産大臣のような行政機関の長が、国が保有する特定の情報を「重要経済安保情報」として「指定」するが、その指定は二段構えになっている。
まず、電力・ガス・情報通信・放送・金融のような「基幹的なインフラ」および半導体や天然ガスなどの「重要物資のサプライチェーン(供給網)」という「重要経済基盤」について、①外部の攻撃から重要経済…
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週刊エコノミスト
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