国際・政治統計の泥沼

迷走する賃金論争=黒崎亜弓

中央は西村清彦・統計委員会委員長
中央は西村清彦・統計委員会委員長

不正発覚の糸口は数字 

「実は全数調査を行っていなかった」──。賃金や労働時間を調べ、GDP(国内総生産)算出にも用いられる毎月勤労統計調査。厚生労働省の統計担当者に不正を告白させたのは、誰でも見ることができる政府の統計データから計算した数字だった。

 その統計データは、政府の統計ウェブサイト(e-Stat)で公開されている。毎月勤労統計の2018年1月分の「旧サンプル」と「新サンプル」のデータだ。多くの統計がそうだが、調査に偏りがないように調査対象(サンプル)を定期的に入れ替えている。毎月勤労統計では18年1月を境にサンプルが部分的に入れ替わったため、同じ18年1月分で新旧サンプルをそれぞれ集計した二つの値が存在する。ただ、500人以上の事業所に限れば本来全数調査だから、新旧のサンプルはほぼ同じもので、二つの値は同じになるはずだ。

 ところが、「きまって支給する給与(定期給与)」を500人以上の事業所の新旧で比べると、新サンプルの値が旧サンプルよりも2.86%も高くなる(図1)。

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