『インサイド財務省』 評者・土居丈朗
有料記事
著者 読売新聞経済部 中央公論新社 1500円
「最強官庁」の凋落 克明に描写を展開
消費増税を10月に控える今、財務省はどうなっているのか。「最強官庁」と呼ばれた財務省が、第2次安倍内閣以降、影響力が衰えた姿を、本書は描いている。
本書の展開の伏線には、経済産業省官僚が安倍首相と近く、そのラインから財務省が外されている、との見立てがある。元をたどれば、安倍首相は、小泉内閣期から、消費増税を前提とした財政再建よりも経済成長を重視する「上げ潮派」だった。 ただ、もっと根深いところでいえば、安倍官邸は、民主党にすり寄った勢力を嫌う。野田内閣で、社会保障・税一体改革と銘打ち消費税率10%までの道筋を提起した財務省だけではない。菅内閣で実現した法人税減税になびいた経団連。いずれも、かつてほどの影響力がなくなったとみられている。民主党にすり寄ったが、安倍政権になる前にその会長を引きずり降ろした日本医師会は、逆に影響力が増している。経団連も、民主党政権期の会長から交代してからは、復調している。
こうした視点を踏まえて本書を読むと、財務省の今の姿がより生々しく伝わってくる。財務省が強く提案する重要政策が、安倍政権下で採用されない有り様を、人間模様とともに描いている。
残り627文字(全文1160文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める