教養・歴史書評

『インサイド財務省』 評者・土居丈朗

     消費増税を10月に控える今、財務省はどうなっているのか。「最強官庁」と呼ばれた財務省が、第2次安倍内閣以降、影響力が衰えた姿を、本書は描いている。

     本書の展開の伏線には、経済産業省官僚が安倍首相と近く、そのラインから財務省が外されている、との見立てがある。元をたどれば、安倍首相は、小泉内閣期から、消費増税を前提とした財政再建よりも経済成長を重視する「上げ潮派」だった。 ただ、もっと根深いところでいえば、安倍官邸は、民主党にすり寄った勢力を嫌う。野田内閣で、社会保障・税一体改革と銘打ち消費税率10%までの道筋を提起した財務省だけではない。菅内閣で実現した法人税減税になびいた経団連。いずれも、かつてほどの影響力がなくなったとみられている。民主党にすり寄ったが、安倍政権になる前にその会長を引きずり降ろした日本医師会は、逆に影響力が増している。経団連も、民主党政権期の会長から交代してからは、復調している。

     こうした視点を踏まえて本書を読むと、財務省の今の姿がより生々しく伝わってくる。財務省が強く提案する重要政策が、安倍政権下で採用されない有り様を、人間模様とともに描いている。

    残り668文字(全文1160文字)

    週刊エコノミスト

    週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
    有料会員になると、続きをお読みいただけます。

    ・会員限定の有料記事が読み放題
    ・1989年からの誌面掲載記事検索
    ・デジタル紙面で過去8号分のバックナンバーが読める

    通常価格 月額2,040円(税込)

    週刊エコノミスト最新号のご案内

    週刊エコノミスト最新号

    3月3日号

    4月施行 働き方改革法 労基署はここを見る20 企業の成長を促す法改正 会社を作り直す覚悟を ■村田 晋一郎/吉脇 丈志23 働きやすい職場を作るビジョンを示せ ■安中 繁24 同一労働 同一賃金 待遇差に合理的な説明が可能か ■河野 順一27 役割・待遇の明確化 会社の創造的破壊を ■向井 蘭30 [目次を見る]

    デジタル紙面ビューアーで読む

    おすすめ PR

    最新の注目記事

    ザ・マーケット