週刊エコノミスト Online書評

『大分断 格差と停滞を生んだ「現状満足階級」の実像』 評者・後藤康雄

著者 タイラー・コーエン(ジョージ・メイソン大学教授) 訳者 池村千秋 NTT出版 2400円

経済停滞、活力低下もたらすリスク回避行動様式を分析

 経済の停滞と社会の分断が同時に進む米国の現状を、大胆に捉えた刺激作である。そこでの中心的な仮説は、現状に満足する巨大な階級の台頭が現在の行き詰まりの根底にある、というものだ。本書が直接扱うのは米国だが、状況は驚くほどわが国に合致する。日本語版序文で指摘されるように、日本は「現状満足階級」の先駆者なのかもしれない。

 経済・社会の変革を望むようでいて、自らの生活が大きく変わることを好まない「現状満足階級」。そのリスク回避的な行動様式は、平穏なコミュニティーへの帰属を促す。それは社会全体でみれば活力を低め、経済の停滞につながる。そして、経済の停滞がまた個人のリスクを取る意義を弱め、平穏な暮らしに満足を見いだす方向に向かわせる──。

残り825文字(全文1214文字)

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