週刊エコノミスト Online書評

『超不確実性時代のWTO ナショナリズムの台頭とWTOの危機』 評者・浜矩子

著者 深作喜一郎(慶応義塾大学特任教授) 勁草書房 3500円

今こそ必要とされるWTO 今日的課題と取り組みを詳述

 我が授業では、毎回のテーマについてあらかじめ学生諸氏に事前リポートの提出を求める。ある時、WTO(世界貿易機関)をテーマに選んだら、WHO(世界保健機関)についてリポートを書いてきた学生さんがいた。笑ったらいいのか、泣いたらいいのか。分からなくて困った。 かくのごとく影の薄くなったWTOについて、本書が実に網羅的で詳細な解説を施してくれている。何しろ、著者がWTOの前身であるGATT(関税貿易一般協定)事務局で長らく経済分析に携わっていた人だから、筆致が確かで情報量も多い。上記の学生さんもこれを読めば、二度と再びWTOをWHOだと思い込むことはなくなる。

 ハイレベルなWTOガイドブックであると同時に、本書は、ドナルド・トランプ流問答無用の通商戦略に関する徹底解明の書としても、読み応えがある。面白いことに、トランプ大統領がWTOを口汚くこき下ろし、役立たず呼ばわりすればするほど、実はWTOへの注目度が増してきた。WTOをパワーアップさせよう。そう思う他の加盟国の機運も、高まってきた。その経緯を、本書がとてもよく描出してくれている。

残り663文字(全文1192文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で過去8号分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

2月14日号

どうする?どうなる?日銀大検証16 岸田政権「インフレ抑制」へ 10年ぶり総裁交代で緩和修正 ■浜田 健太郎19 インタビュー 軽部謙介 帝京大学教授・ジャーナリスト 日銀が甘くみた内閣の力 「安倍1強」に内部ひょう変21 「 ガラパゴス」日銀 市場機能をマヒさせた「看守」 低金利慣れの財政に大打撃 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事