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週刊エコノミスト Online 書評

『地方財政健全化法とガバナンスの経済学 制度本格施行後10年での実証的評価』 評者・井堀利宏

著者 赤井伸郎(大阪大学大学院教授) 石川達哉(大阪大学招へい教授) 有斐閣 3800円

地方財政の持続可能性に向け 法律の効果と課題を実証分析

 夕張市の財政破綻で旧再建法の不備が明確になり、2007年に地方財政健全化法が施行された。その後地方自治体の財政は総じて好転しているが、自治体の財政破綻懸念が完全に払拭(ふっしょく)されたともいえない。本書は本格施行後10年間の地方財政健全化法が個別自治体の財政健全化に寄与した論理・背景と残された課題について、自治体行動のインセンティブ(刺激策)という観点から経済学的に実証分析する。

 健全化法は四つの健全化判断比率(実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率)を用いて自治体の財政運営が持続可能でなくなる兆候を事前に把握し、自治体が自発的に財政危機を未然に防ぐ仕組みである。本書は、これら四つの健全化判断基準が自治体の財政健全化行動を促すガバナンス(統治)効果を持った点で評価する。財政健全化法で個別自治体の健全化努力を早めに促すことは、意義深い。

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