歴史認識と共に「日本」を捉える=将基面貴巳
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最近、ハーバード大学のジル・ルポア教授が指摘したことだが、特に1970年代以降、「国民の歴史(ナショナル・ヒストリー)」は、歴史研究者の間で論じられなくなった。国民国家の「衰退」が論じられるようになり、歴史研究者はグローバル・ヒストリーの叙述を目指すようになった、という。その結果、「国民の歴史」という分野は一種の“真空地帯”となった。その“真空”を埋めたのは“素人たち”だ、というのである。
このような現象は現代日本においても生じている。百田尚樹『日本国紀』(幻冬舎、2018年)が昨年末から今年初めにかけて話題となったが、この日本通史の体裁をとった書物の著者は作家であって、専門の歴史研究者ではない。百田氏は、その本が「物語」だと述べており、歴史家による専門的叙述とは異なることをほのめかしている。しかし、一般読者の多くによって、その本が“一応それなりの”日本史概説であるかのように受け取…
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週刊エコノミスト
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