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週刊エコノミスト Online 書評

疫病と戦った西洋医療がインドに与えた変化と忌避=本村凌二

 21世紀の先進諸国では、流行病といえば冬季のインフルエンザぐらいで、それも死にいたる者はきわめて少ない。流行病あるいは疫病よりも老衰で亡くなる人が多いという。ところが、第一次大戦前までは、流行病で死亡する場合が甚だしかった。

 デイヴィッド・アーノルド『身体の植民地化』(みすず書房、7600円)は、副題に「19世紀インドの国家医療と流行病」とあり、大英帝国支配下の南アジアにおける医療と流行病の実態に迫る歴史書である。

 インドそのものには長い歴史があり、高温多湿を背景とする伝来の在地医療が大きな力を持っていた。しかし、植民地化が始まり、西洋医療が持ちこまれたとき、そこに徐々に変化が起こっていく。「どのようにして西洋医療はインドに定着し、インド人とヨーロッパ人に対して等しく権威を標榜(ひょうぼう)できるようになったのだろうか」。それが全体テーマだ。

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