イラン国内情勢 相次ぐデモに国民のいら立ち=田中浩一郎
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1月8日にイランの首都テヘラン郊外で墜落したウクライナ機について、11日にイラン軍が自らの誤射を認めたことで、抗議デモが起こった。イランでは昨年11月にも、ガソリン価格の値上げをきっかけに全国規模の街頭運動が起こったが、この二つのデモは、参加者や性質が異なる。
昨年11月のデモは、政策に対する不満が背景にある。米国の経済制裁により、貿易が大幅に滞ったため、政府は昨年夏ごろから、国際市場と国内市場を切り離す「自給自足」経済にシフトした。その結果、国内経済は昨年秋口からそれなりに落ち着きを取り戻していた。一方で、国内と国外のガソリン価格の乖離(かいり)がどんどん大きくなり、国外への密輸が非常に増え、富の流出に拍車がかかった。そのため、政府は4年半ぶりに国内ガソリン価格を値上げしたが、価格は従来の3倍となり、国民生活に大きなショックをもたらした。デモの参加者は低所得層から中流層が中心だ。
それに対し、ウクライナ機撃墜に伴うデモは、政権ではなく、軍と体制、つまり、ハメネイ師などの最高指導部に矛先が向かった。軍が政府、国会、メディア、諸外国などあらゆるところにウソをついたことで、体制そのものに対する批判となった。こちらのデモは、学生などのインテリ層が中心だ。
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週刊エコノミスト
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