哲学 カミュ『ペスト』の抽象に似ろ ハラリが警戒する「全体主義」=小川仁志
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コロナ危機はたしかに未曽有の危機だが、何もかもが新しいというわけではない。よくいわれるように、人類の歴史は、それこそウイルスとの戦いの歴史であったといっても過言ではないからだ。近世以降だけでも、14世紀のペスト、20世紀初頭のスペイン風邪、21世紀初頭のSARS(重症急性呼吸器症候群)など、人類は何度もウイルスに襲われてきた。
そしてその都度、科学だけでなく、あらゆる分野の学問がこの問題に対峙(たいじ)してきた。哲学も例外ではない。本誌の連載(4月28日号)で紹介したカミュの『ペスト』がその典型だろう。この作品でカミュは、第二次世界大戦を念頭に置きつつも、直接的にはペストを題材にして、不条理を乗り越えるための哲学を世に問うた。
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週刊エコノミスト
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