新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

経済・企業 ベーシックインカム入門

Q6議論の歴史は? 「社会を支える労働に報いる」 18世紀末から民衆運動の蓄積=山森亮

女性解放運動でベーシックインカムを要求するイギリスの労働者階級の女性たち。1980年前後に撮影
女性解放運動でベーシックインカムを要求するイギリスの労働者階級の女性たち。1980年前後に撮影

 ベーシックインカム(BI)の議論の歴史は、200年あまり過去にさかのぼる。どのような状況下で、人々が何を求め、BIを要求したのかを振り返ってみると、そこには新型コロナウイルスが猛威を振るう世界の今後、いわゆるポストコロナの社会を展望するうえでのヒントがあるように思える。

 BIの起源は、18世紀末のイングランドにある。18世紀後半、議会主導で共有地の「囲い込み」が行われた。多くの農民が土地を追われ、生計を立てる手段を奪われた。イングランドの地方都市で学校長をしていたトマス・スペンスは、こうした農民たちの苦境を目にし、人類の共有財産(=コモンズ)であるはずの大地を私有することの不当性を訴えた。

 といっても、地主たちから土地を奪い返すのではなく、地主たちに地代を払わせるという内容の提案だった。この地代で、コミュニティーの出費をすべて賄っても、かなりの剰余が出るはずであり、それをコミュニティーの全住民に平等に配ろうという趣旨だ。文書の形で残っているのは、1797年に出版された『幼児の権利』というパンフレットである。

残り2180文字(全文2641文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事